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日外会誌. 99(1): 26-30, 1998


特集

広範囲熱傷治療の現況

6.広範囲熱傷と免疫能

防衛医科大学校病院 救急部

川上 正人 , 岡田 芳明

I.内容要旨
広範囲熱傷患者は感染症を併発しやすいだけでなく,発症した感染症は重症化しやすい.敗血症による多臓器不全の予防および治療は,熱傷患者を治療するうえでの最重要課題である.過去30年間多くの研究が行われ,熱傷患者では免疫能が様々なレベルで抑制されていることが証明されている.広範囲熱傷では,免疫グロブリンやオプソニンの血中濃度の低下,補体系の変化,貧食能の低下,白血球機能の低下,同種皮膚移植片の拒絶遅延,遅延型皮膚過敏反応の抑制などが認められる.また,近年の免疫学の進歩により,サイトカインやアラキドン酸代謝産物が熱傷後の免疫能抑制に極めて重要な役割を果たしていることが明らかにされている.
広範囲熱傷における免疫能の変化を研究し理解を深めることで,重症感染症の発症を減じることが可能となる.また,こうした研究により感染症の発症や重症化を防ぐための免疫能を制御する治療手段が発見されうる.

キーワード
広範囲熱傷, 免疫能, アラキドン酸, サイトカイン, 神経内分泌


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