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日外会誌. 98(12): 983-989, 1997


特集

最近の新生児外科

2.出生前診断と周産期医療ネットワーク作り

九州大学 医学部小児外科学教室

水田 祥代

I.内容要旨
近年急速に進歩した超音波診断による出生前診断は,形態学的,機能的異常をもつ胎児の周産期管理に,産科,新生児科,小児外科,麻酔科などによるチーム体制を導入し,より充実した周産期管理および両親へのカウンセリングを可能にしたことや必要に応じた胎児治療が可能であることなどの利点をもたらしたが,一方,家族,とくに母親の受ける精神的ストレスは大きくなっている.さらに,出生前診断が行われる以前は診断されることなく経過し,胎内あるいは生直後に死亡したような重症例が診断されるようになったが,これらの症例の救命は現在の医療では不可能な場合が多く,出生前診断が治療成績の向上には結びついていない疾患も認められる.また,現時点では救命不可能な症例に対してのselective non-treatmentや胎児の生命権に対する倫理的,社会的対応など,今後に残された課題は多い.更に,出生前診断は胎児治療という新しい分野を産み出したが,より安全な胎児治療法の開発とその適応症例の識別という課題が残されている.

キーワード
出生前診断, 胎児外科, 周産期医療


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