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日外会誌. 98(11): 965-967, 1997


その他

肺癌外科治療の進歩

千葉大学 医学部肺癌研究施設外科

山口 豊

I.内容要旨
原発性肺癌手術例は20年前と比べ最近10年で約4倍に増加した.画像診断の進歩は腫瘍進展評価を向上させ,術前確定診断率は最近20年間では95%を凌駕し,老健法肺癌集検は早期肺癌発見と治癒に貢献している.病理病期別頻度でも,最近では初期に比べI期で22%から46%,IIIA期で40%から23%と,組織型でも,扁平上皮癌の頻度がやや減少傾向にあるが,腺癌は43%から55%と増加した.これらの因子とアジュバント療法とが相俟って外科療法の成績を向上させている.すなわち初期の5生率25.2%に比べ,最近の9年間は55.2%と念願の55%の大台に乗った.また最近9年の組織型別の5生率は腺癌50.6%,扁平上皮癌45.4%,大細胞癌43.3%,小細胞癌44%と共に向上し,各組織型間に差が認められない.初期の腺癌と扁平上皮癌の5生率は差がなく近年は58.7%,50%と上昇し,腺癌の方が良好であった.また病期でも5生率で病期Iで初期の48.1%から78.5%と向上し,IIIA期でも14%から35.2%に向上してきている.
病理学的に確認されたT3例の拡大手術の5生率は心膜37.5%,胸膜31.8%が比較的良好で,他は良好でなく,T4肺癌では左心房3,食道3,椎骨2,大静脈5,大動脈3にこれら浸潤臓器の合併切除を施行したが,その予後は.左心房1例,食道2例,大静脈1例,大動脈2例が13月以上生存している.
縮小手術は44例に施行したが,施行理由は低心肺機能,再発が大部分で,絶対的治癒切除例の生存曲線とほぼ同様な経過を示した.
気管・気管支形成例は90年代になって2倍,気管分岐部切除気道再建が3倍に増加している.
術後アジュバントLAK細胞による養子免疫療法評価可能例全体の成績ではLAK群(n=83)の5生率50%,8生率46%,対照群(n=86)の5生率20%,8生率17%で,両者の間に有意差が認められた.

キーワード
肺癌外科治療, 肺癌集検, リンパ節転移診断, 拡大・縮小手術, 気管・気管支形成, 養子免疫療法


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