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日外会誌. 98(9): 767-772, 1997


特集

進行度を配慮した食道癌外科治療

Ⅳ.T4(A3)症例における外科治療と補助療法
2.T4食道癌に対する化学・放射線併用療法後の根治手術

慶雁義塾大学 医学部外科

安藤 暢敏 , 小澤 壮治 , 北川 雄光 , 竹内 裕也 , 北島 政樹

I.内容要旨
気管・気管支や大動脈T4(A3)胸部食道癌の治療成績は劣悪で,標準的治療と呼べるmodalityは未だない.最近このような高度進行食道癌に対し化学・放射線併用療法(CRT)を加え, downstagingにより切除可能となった症例を経験できるようになった.1992~96年にT4と判定しCRTを施行した胸部食道癌は30例で,左主気管支T4がのべ14例,気管が13例,大動脈3例などであった.初期の6例には化療(CDDP/5-FU)と放治(30Gy/15fr/3W)をsequentialに2コース行い,その後はconcurrentに2コース行いCDDPの投与法も単回から連続投予に変更した.1コース後の評価にて切除可能になると判断した症例には,2コースの照射量を20Gyとした. CRTによるgrade 3以上の血液毒性は白血球減少(≦2000)が17例(57%),血小板減少(≦50×103)が1例にみられた.5例に術前G-CSFを投予し,うち1例には術後にも投予した.他のgrade 3以上の毒性は認められなかった.2コースを完遂した完全例は26例で,PR以上の奏効例は22例(73%)で11例(T4例の37%)は切除可能となった.これらの治療前の腫瘍長径は8cm以上で,T4臓器は気管支が8例と最も多かった.組織学的には主癌巣,リンパ節ともにgrade 3が4例みられ,一方両病巣ともにgrade 1は2例であった.予後は最長36か月生存中で,3例は原病死,1例は遷延する膿胸による他病死であった.CRTによる免疫抑制,易感染性などの特殊な病態下の開胸開腹術術後には,軽微な合併症も軽視できない.CRT導入以前のT4不完全切除+術後癌遺残部照射19例との比較では,術前CRT切除例の予後が明らかに良好であった.CRTにより気管・気管支,大動脈T4例で切除可能例が得られるようになった.T4例に対する新しい治療戦略として期待できる.

キーワード
A3食道癌, 化学放射線療法, Neodjuvant therapy

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