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日外会誌. 98(8): 713-716, 1997


症例報告

心停止をくり反した toxic cholangitis

1) 大阪大学 医学部救急医学
2) 泉州救命救急センター 

谷崎 かなび1) , 平出 敦1) , 西村 哲郎1) , 栄 博史2) , 吉岡 敏治1) , 杉本 壽1)

I.内容要旨
従来,健康であった43歳の男性が,上腹部痛を訴えた後,意識障害で搬入された.Klebsiella pneumoniaeによるbiliary sepsisの状態であり,循環の維持に難渋した.画像上,胆嚢内に多数の結石を認めたが,造影検査で胆管の通過は良好であった.一過性の胆道系の通過障害と胆道内圧の上昇により敗血症に至ったものと考えられた.しかし,感受性のある抗生剤の投与にもかかわらず,病態は悪化し,心停止をくり返した.その原因を検討したところ,高TNF血症が特徴的であった.血漿交換後,循環は安定した.近年,内視鏡的ドレナージ等を用いた,胆道感染症に対する積極的なドレナージ治療が定着した.しかし,胆嚢ドレナージを行い,胆管の良好な通過が認められたにもかかわらず,激烈な経過をたどった本症例は,高TNF血症の病的意義を浮き彫りにしている.抗TNF療法の適応を考える意味でも示唆的な症例と考えられる.

キーワード
toxic cholangitis, 胆嚢炎, TNF


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