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日外会誌. 98(8): 691-696, 1997


特集

慢性肝炎・肝硬変合併疾患の外科

Ⅲ.各論的事項(慢性肝炎)
6.肝硬変合併肝細胞癌の外科

京都大学 医学研究科消化器外科

猪飼 伊和夫 , 山本 雄造 , 尾崎 信弘 , 坂井 義治 , 嶌原 康行 , 山岡 義生

I.内容要旨
本邦における肝細胞癌のほとんどはB型,またはC型慢性肝炎・肝硬変を合併しており,治療にあたっては進行度,肝機能障害の程度により治療法を選択する必要がある.臨床病期IIIでは腫瘍破裂などの緊急症例を除いては外科的治療の適応外で,臨床病期IとIIが肝切除術の適応となる.肝切除が可能な肝機能を有すれば,治療効果の確実性という点からは外科的切除が第一選択と考えられる.肝切除にあたっては,腫瘍が小さければ術前の肝機能評価に重点をおいて術式を決定し,腫瘍が大きい場合や門脈・肝静脈に腫瘍栓を伴う進行肝癌においては術前の肝機能評価に加えて腫瘍の性状や非腫瘍部の代償性肥大,門脈血流動態の変化を考慮に入れて肝切除の適応の拡大をはかることが必要である.また,術前肝機能評価は術式の決定だけでなく予後を推定するためにも重要な要因となる.一方,門脈本幹や肝静脈に腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌は経皮的エタノール注入療法・肝動脈塞栓化学療法の適応外であり,積極的な肝切除術以外に延命は期待できない.術前評価や術後管理の進歩,術式の改善により拡大肝切除術においても術後の致死的合併症は減少しており,高度進行肝細胞癌に対して外科的治療を中心に術後補助療法をあわせた集学的治療を行うことにより予後の改善はかることが重要である.

キーワード
肝細胞癌, 肝硬変, 肝機能評価, 門脈腫瘍栓, 肝静脈腫瘍栓


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