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日外会誌. 98(6): 560-564, 1997


特集

胃切除後再建術-特にpouch形成の意義-

7.幽門側胃切除後の空腸パウチ間置 (JPI) の意義

金沢大学 医学部第2外科

三輪 晃一 , 木南 伸一 , 佐原 博之 , 松本 尚 , 瀬川 正孝 , 道輪 良男 , 宮崎 逸夫

I.内容要旨
1987年,われわれは幽門側胃切除のあと,口側に二重腸管のパウチそして肛門側に順蠕動性導管をもつ空腸脚を残胃と十二指腸に問置する再建術(JPI)を考案した.Billroth 1(B-1)法胃切除術後の小胃症状の緩和と十二指腸胃逆流を防止する目的である.
1987年1月から1994年3月までに手術を受け術後1年以上経過したJPI法101例を, B-1法の64例を対照に,その機能を評価した.アンケートの回収率はJPI法90.6%,B-1法83.3%であった.流動食に加えた111Inの十二指腸への排泄時間 T1/2(中央値)は, B-1法(9例)では37分で,非胃切除者47-78分より短縮し,一方JPI法(20例)では85分と延長し, B-1法との問に有意差が見られた(p< 0.05).食習慣は,「手術前と同じ1日3回食」に復帰したのはB-1法では87%に対し,JPI法では100%であった(p< 0.05).ダンピング症状の発現は,B-1法 20%に対し, JPI法は6%と低率であった(p< 0.05).「食後に休息を必要とする」頻度は,B-1法では27%に対し,JPIでは9%と低かった(p< 0.05).99mTc-PMT静注によるシンチスキャンニングによる十二指腸胃逆流は,B-1法(9例)では78%に対しJPI法(20例)では10%であった(p< 0.01).術後4年以上経過症例の内視鏡検査では,残胃の発赤・易出血性・びらん・浮腫・萎縮などの陽性率は,Bl法よりJPI法が有意に低く,逆流性胃炎の頻度は低かった(p< 0.01).「胸焼け」の訴えは,B-1法で7%に認められたのに対し,JPI法では見られなかった(p< 0.05).
反面,手術時間はB-1法の195±57分に比べ,JPIは299±86分と延長し(p< 0.01),出血量もB-1法の412±258mlに対し, JPIは578±254mlと多かった(p< 0.01).しかし,JPI法の縫合不全,鬱滞などの合併症の発生はB-1法と変わらず,食事開始日もB-1法は7日,JPI法は8日で差はなかった.
以上の成績より,JPIは摂食量の増加,ダンピング予防,十二指腸胃逆流予防の点で,B-1法に勝る再建法であると結論される.

キーワード
幽門側胃切除術, パウチ再建, 胃切除後症候群, ダンピング症候, 十二指腸胃逆流


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