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書誌情報]
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日外会誌. 98(6): 555-559, 1997
特集
胃切除後再建術-特にpouch形成の意義-
6.噴門側胃切除後
I.内容要旨比較的早期の上部胃癌に対して,噴門側胃切除術を施行する場合がある.著者らは噴門側胃切除後に,有茎空腸pouchを形成して,間置する術式を臨床に応用し,すでに42症例を経験している.そこで今回は,本術式を積極的に行うに至った経過を含めて,噴門側胃切除術後に,空腸pouchを形成し間置することの意義について述べる.
噴門側胃切除後の再建術式として食道・残胃吻合術が行われていた時代には,胃全摘術と比較しても術後愁訴が多く,評価はきわめて低いものであった.しかし,噴門側胃切除術にはいくつかの利点があり,空腸間置法やdouble tract法による再建を行い,本術式を採用する施設がでてきた.これらの再建術式により,術後愁訴などの改善がみられたが,一方で以下のような新たな問題が指摘されるようになった.
胃癌の手術後の予後がきわめて良好となった昨今においては,新たに発生する残胃および十二指腸,胆道,膵などの病変に対しても,X線学的・内視鏡的な診断や治療がしばしば要求される.空腸間置法やdouble tract法では,長い空腸が使われるため,逆流性食道炎などによる術後愁訴を少なくできても,これらの要求に応えることは困難である.しかしながら,著者らの行っている術式では,再建した空腸pouchがもともとの胃の形態に近いため,残胃および十二指腸,胆道,膵の観察が容易である.新たに発生する病変に対しても,X線学的・内視鏡的な診断,治療を行うことが可能である.これらの点が本術式を行う最大の意義と思われる.
本術式にも,pouchの作製に時間がかかるなどの問題点は存在する.しかし,quality of lifeを考慮すると,噴門側胃切除術後に空腸pouchを形成することは大きな意義があり,是非,諸施設で試みて戴きたい.
キーワード
噴門側胃切除術, 空腸pouch, 胃癌, 残胃癌, 逆行性胆道膵管造影
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