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日外会誌. 98(5): 491-494, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

5.肝門部胆管癌

名古屋大学 医学部第1外科

梛野 正人 , 二村 雄次 , 神谷 順一 , 金井 道夫 , 上坂 克彦

I.内容要旨
閉塞性黄疸で発症することの多い肝門部胆管癌に対する診断・治療の第一歩は,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)による適切な減黄を行うことである.内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD)は肝門部胆管癌に対する術前のドレナージとして用いることには否定的な意見が多い.教室では左右の肝管が分断されている場合,複数のカテーテルを挿入し,可能な限り全胆道系をドレナージする方針であるが,残存予定側のみのドレナージを推奨する者もいる.広範囲肝切除の前には肝予備能の的確な評価が必要であるが,現在まで簡便性および信頼性の面からindocyanine green(ICG)検査を凌駕する検査法はない.肝門部胆管癌では胆管炎の有無や耐糖能などが複雑に影響するので,ICG検査のみで肝の切除限界を明確に示すには未だ至っていない.術前の門脈枝塞栓術は肝切除術の安全性向上および適応拡大に貢献しており,今後は肝門部胆管癌に対する広範囲肝切除の術前ルーチンワークとなるであろう.手術術式では高率に認められる神経周囲侵襲に対する神経叢郭清の程度とその範囲を再検討する必要がある.また,尾状葉切除の必要性は広く認められるようになったが,尾状葉の局所解剖,特に右後区域との境界は曖昧であり,その取り扱いを明確にする必要があろう.

キーワード
肝門部胆肝癌, 肝区域切除, 尾状葉切除, 経皮経肝胆道ドレナージ, 経皮経肝門脈枝塞栓術


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