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日外会誌. 98(5): 484-490, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

4.肝内胆管癌

三重大学 医学部第1外科

田岡 大樹 , 川原田 嘉文

I.内容要旨
肝内胆管癌は肝細胞癌のように高危険群が不明なため,進行し腫瘍径も大きくなってから発見されることが多く予後不良である.しかし現在のところ有効な化学療法,放射線療法はなく肝切除を伴った外科的手術以外に有効な治療手段がない.そこで本邦では根治切除を目標に,40%以上の陽性率を認めるリンパ節群に対して所属リンパ節の郭清と,肝葉切除以上の手術が60%以上に施行されてきた.しかし今だ5年生存率(以下,5生率)は全国集計では26.1%と低く,また積極的なリンパ節郭清も現在のところ予後を反映しておらず再検討の時期に入っている.そこで肝内胆管癌取扱い規約小委員会ではまず予後を共通の基盤で検討すべく,肉眼型を胆管内発育型,胆管浸潤型,腫瘤形成型の3型に分けている.現在,胆管内発育型はどの施設でも予後良好であることが明らかとなってきた.またリンパ節転移の有無が最も予後を反映しているとの報告例が多く,陽性例では根治不可能と主張する施設もある.
教室の成績をみると,胆管内発育型は全例生存中であるのに対して,胆管浸潤型,腫瘤形成型,腫瘤形成型+胆管浸潤型の5生率は各々33.3%,13.6%,20.2%と不良である.またリンパ節転移の有無からみた予後では陰性例の5生率が45.1%であるのに対して,陽性例では10.8%と極めて不良である.
さらに組織型から予後をみると低分化腺癌,管状腺癌(大~中管状腺癌が主),乳頭状腺癌の順に予後不良であった.
今後,根治治療に必要な肝切除範囲を明確にすると同時に,リンパ節郭清の必要性ならびにその郭清範囲を明らかにする必要がある.さらに外科的切除にて予後不良な症例に対しては,分子生物学的悪性度に遺伝子検索を加えた新しい治療戦略が必要と思われる.

キーワード
肝内胆管癌, 肉眼分類, リンパ節群, 肝切除後生存率, 生物学的悪性度


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