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日外会誌. 98(5): 479-483, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

3.胆管癌の内科的治療(化学療法)

筑波大学 臨床医学系外科 (消化器)

轟 健

I.内容要旨
胆管癌は依然として早期発見が困難であり,切除後の再発・転移症例や切除不能症例が多く,予後不良である.従って,少ない副作用で抗腫瘍効果の高い化学療法が治療成績の向上に必須である.これまで20年以上に亘り,様々な化学療法が試みられていが,多数例でのcontrolled studyは世界的にも少なく,胆管癌の化学療法は未開発状態にある.抗癌剤の薬物動態的特徴を含めて従来の論文をレビューし,評価病変の記述が明確な症例のみを集計して,抗癌剤の投与法,奏効性,副作用,生存期間等についてまとめた.
全身投与,肝動脈内持続投与,胆管内投与等が主な投与方法であった.投与頻度の高い抗癌剤は5-FU系,ADM(Adriamycin)系, MMC(Mitomycin)等で,ADM系薬剤は胆管組織や胆汁中に比較的高濃度に分布する等,薬物動態・分布的特徴が注目される.しかし,単独投与では,5-FU系薬剤やMMCと同様に有効性は低い.最近の報告では,全身投与,肝動脈内投与の何れでも,5FU+ADM+MMC(FAM),或いは5FU+MMC等の多剤併用が多い.全身投与の奏効率は全体で18.6%(13例/70例)であるが,FAMのPhase II trialでは約29%(4例/14例)の奏効率を挙げ,副作用も耐容範囲にあり,奏効例での生存期間も比較的長い傾向が報告されている.肝動脈内投与(ADMあるいは5-FU+MMC)で50%(3例/6例)の高い奏効率を挙げているが,症例数が極端に少なく,今後の検討に期待したい.胆管内投与は試行の段階にあり副作用等,今後検討すべき余地が大きい.

キーワード
胆管癌, 化学療法, 全身投与, 肝動脈内投与, 胆管内投与


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