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日外会誌. 97(12): 1079-1084, 1996


特集

外科周術期重症感染症の現状と対策

9.MOF-DlC対策と血液浄化法

千葉大学 医学部救急医学

平澤 博之 , 菅井 桂雄 , 織田 成人 , 志賀 英敏 , 松田 兼一 , 上野 博一

I.内容要旨
周術期の症例に重症感染症が発症すると,それらは敗血症となり,遂には敗血症性多臓器不全(septic MOF)を発症してしまう.このようにseptic MOFを発症してしまうと依然として救命率は低いので,septic MOFを発症させないよう管理することが重要である.その意味では最近提唱されたSIRSなる概念は,敗血症の病態を整理する上で,また感染症に罹患し重症化する症例を識別する上で極めて有用である.すなわち敗血症をinfection-induced SIRSとしてとらえ,SIRSの中でも重症化する可能性の高い症例を鑑別し,それらに対してはhumoral mediator対策を中心とした対策を試みるべきである.
またseptic MOFの予防や治療において,血液浄化法は重要な位置を占めているが,最近ではその施行法もまた施行する目的も異なってきている.すなわち血液浄化法の種類としては従来の間欠的血液浄化法に代わって,持続的血液浄化法が施行されるようになってきており,なかでも持続的血液濾過透析(CHDF)は簡便かつ安全に施行可能で,しかも多彩な有効性を期待できるので第一選択である.またseptic MOFの治療や予防における血液浄化法に期待する有効性としても,従来の不全臓器に対する人工補助療法ととしての有効性だけではなく,humoral mediatorなどの病因物質を除去し,病態そのものを治療しようとして,より積極的に用いられるようになってきている.
DICは従来よりseptic MOF発症の重要な病態であるとの認識があったが,最近では凝固・線溶系の異常は発症するものの,それらはmicrothombusを形成するというような形で病態の発症に関与しているのではなく,内皮細胞を障害し,全身的な炎症反応を惹起しているという形で関与しているのであり,この状態はむしろDII(disseminated intravascular inflarnmation)と呼ぶべきである.

キーワード
多臓器不全 (MOF), SIRS, 持続的血液濾過透析 (CHDF), cytokine, DII (disseminated intravascular inflammation)


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