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日外会誌. 97(12): 1072-1078, 1996


特集

外科周術期重症感染症の現状と対策

8.敗血症の現状と対策

札幌医科大学 第1外科

平田 公一

I.内容要旨
敗血症治療成績向上をめざして予防的治療対策をとるべきとの基本姿勢から欧米で「SIRS」の概念が提唱され,本邦においてもその考え方については普及した感がある.臨床の場では治療の適応・判定に応用されている一方,臨床と並行して基礎的研究においてはサイトカインを始めとする数多くのhumoral mediator,superoxide,NOなどの測定系の確立,それらを制御するmRNAなどの検討が安定的に成されるに至り,敗血症やSIRSの病態が科学的に説明されるに及んでいる.このように「SIRS」は,感染による侵襲の程度を把握することが可能となったこと,分子生物学的レベルでの病態解明が成されたこと,など画期的な役割を果たしたと言える.しかし,予後判定などのprospectiveで客観的な診断が臨床の場で可能となったというものではなく,感染局所と全身反応の管理については,基本的には,逐一,的確な病態把握が要求されていることについては以前と変わりがない.新しい治療法については,各種のモノクローナル抗体やサイトカイン・スーパーオキサイドに対する制御因子などの開発・研究が進み,病態の解析とともに治療への応用が期待されている段階にある.現状での実際の治療法における進歩については,極めて新しい技術が導入されているわけではないが,敗血症下でのドレナージ手術における周術期管理の向上,例えばバイオガード管理,カテーテル管理,人工呼吸器管理,栄養投与法,血液浄化法などの点で個々に向上がみられるため,それを応用して成績向上を目ざすソフト側の我々の使命は大きいと考えられる.

キーワード
敗血症, SIRS, エンドトキシン, 病態, 治療


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