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日外会誌. 97(12): 1042-1047, 1996


特集

外科周術期重症感染症の現状と対策

3.基礎と臨床からみた院内感染対策

東邦大学 医学部微生物学教室

古谷 信彦 , 山口 惠三

I.内容要旨
院内感染のうち周術期に問題となるものの多くは日和見感染と職業感染である.日和見感染は医療技術の進歩に伴う易感染宿主の増加,あるいは抗菌薬の開発と濫用傾向による耐性菌の出現によって近年増加傾向にある.日和見感染は病原微生物が環境や他の個体に由来する外因性感染と宿主の常在細菌叢に由来する内因性感染に大別される.外因性感染の予防対策としては手洗いを中心とした交差感染の防止,医療機器の滅菌・消毒,院内環境の清浄化が重要である.一方,内因性感染に関しては我々はマウスを用いて顆粒球減少状態における緑膿菌敗血症の発症機序の解析を試み,このような敗血症の原因菌はアンピシリン(ABPC)の投与によって腸管内で選択的に過増殖した緑膿菌であることを明らかにした.したがって,内因性感染症の予防対策としては腸管内などで病原菌が選択,増殖を受けないような抗菌薬の投与法を考慮しなければならない.
職業感染では近年,B型肝炎,C型肝炎,AIDSなどの血中ウイルスが問題となっている.特に針差し事故の防止対策は最も重要なものであり,universal precausionの実践が強調されてきている.

キーワード
院内感染, 日和見感染, 外因性感染, 内因性感染, 職業感染


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