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日外会誌. 97(11): 958-963, 1996


特集

臓器移植

3.臓器保存

千葉大学 医学部第2外科

浅野 武秀 , 剣持 敬 , 磯野 可一

I.内容要旨
臓器保存は臓器移植に欠くことのできない重要な問題であり,数多くの研究がなされてきた.その成果は移植医療の発展に多大な貢献をしたのみならず広く医学,生物学の分野にも応用されている.臓器保存中の臓器障害の過程には臓器摘出時,保存中,虚血再灌流障害があるが,各々の障害を軽減し臓器のviabilityを保持することが肝要である.
臓器摘出時には急速な冷却と血液のwash outが必要であり,in situ cooling techniqueが推奨される.筆者らはroller pumpを用いたin situ machine washout法を用いて死体腎摘出を行い良好な結果を得ている.また初期灌流液としてCMH液を開発し,その有効性をイヌ温阻血膵移植モデルさらに死体腎移植の臨床例にて確認した.
臓器保存法には,臓器を冷却保存液に浸漬し,細胞の呼吸,代謝を抑制させる,単純冷却保存法と一部呼吸,代謝を維持する灌流保存法が行われている.前者は臓器の輸送が簡便で経済的であるが,長期の保存が困難であったが,近年のUW液の開発により保存時間も飛躍的に延長し広く臨床で用いられている.後者は手技が煩雑で臓器の輸送が困難である等の短所を有するが,viablity assayが可能であること,移植前の臓器修飾が可能であること等の利点を有し今後も研究されるべき保存法である.細胞の保存には凍結保存法が適しており,凍結液,プログラムフリーザーを用いた凍結法の開発等により,膵ラ氏島の保存が行われており,すでに臨床に用いられている.
さらに最近では,保存中に臓器や細胞に遺伝子操作技術により遺伝子を導入することにより,移植後の虚血再灌流障害の回避や拒絶反応の抑制の試みが報告されており,臓器保存研究の新しいアプローチとして今後期待される.

キーワード
臓器保存, 臓器摘出, CMH液, 灌流保存, 虚血再灌流障害


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