[書誌情報] [全文PDF] (3341KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 97(7): 492-497, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

急性増悪期の病態

千葉大学 医学部第1外科

中島 伸之

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(ASO)は下肢の血行に重要な役割を有している動脈内腔の狭窄又は閉塞によって血流障害を生じ,下肢の虚血をうみ出す病態と定義づけられるが,この虚血の程度は,閉塞部位と内腔の狭窄及び側副血行路の発達の程度と比例すると考えてよい.表現される臨床症状は,単純には虚血の程度と相関し,これは下肢阻血の重症度分類(Fontaine分類)として良く知られている.急性増悪期の病態を理解するためには,まず非増悪期における虚血の成り立ちについて理解しておくことが必要である.
ASOは動脈硬化性病変によって動脈内腔の変化をきたす慢性疾患であるので,その病状はある期間内においては安定化していて,又進行するとしても徐々に虚血度が重症化する,即ち病変の自然進行(natural progression)が一般的であるといえよう.急性増悪とは,潜在的又は顕在的ASO患者において,症状が急激に進行し,臨床的にはFontaine III度又はIV度の病態が短時間の問にうみ出される状態を指す.この直接的な原因は,動脈硬化性病変の上に血栓形成が進展することにより急性動脈閉塞を生じることによる.血栓形成の機序としては血管壁の性状,血流のうっ滞,及び血液性状の変化の3つが重要である(virchowの三徴).多くの症例では,これらの因子が組合さって血栓が形成される.
虚血が進行すると,筋肉は嫌気性代謝に転換し,最終的には筋壊死に移行する.広範囲重症虚血時にうみ出される特徴のある病態にMNMS(Myonephropathic metabolic syndrome)が注目されている.この病態の基本は,このような症例に対して血行再建術を施行すると,循環血中に壊死筋組織よりミオグロビンが流出し,腎障害を主体とする全身障害が生じることによる.これらの病態についても本文では記述した.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, ASO, 急性増悪, MNMS (Myonephropathic metabolic syndrome)


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。