[書誌情報] [全文PDF] (3939KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 97(7): 498-503, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

臨床診断

山口大学 医学部第1外科

江里 健輔

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(以下本症とする)の臨床診断は比較的容易である.問診により閉塞病変に由来する症状(下肢冷感,しびれ感,間歇性跛行,安静時疼痛,潰瘍・壊疽)があるかどうかを聞き,あればいつ発症したかを確かめる.視診により下肢の皮膚色調,栄養障害(筋肉萎縮,脱毛),潰瘍,壊死の有無をチェックする.慢性が急性増悪すれば,下肢にチアノーゼが認められる.触診ですべての下肢動脈の拍動有無を精査する.通常,足背動脈,後脛骨動脈の拍動から順次触れる.これらが触れればほとんどの場合本症は否定される.しかし触知しない場合には,本症が最も疑われる.次いで膝窩動脈,総大腿動脈の拍動を触診する.触れないかあるいは微弱な場合に本症を疑い種々な検査を行うが,良く触れる場合には整形外科的疾患あるいは糖尿病性末梢神経障害を考慮する.本症の確定診断に有用な検査はAnkle Pressure Index(APL)の測定,動脈造影である.分節的血圧測定は超音波ドップラー計を用いて行われる.足背動脈および後脛骨動脈の血圧を測定し,上腕動脈との比で判断される.下腿動脈のうち,高い血圧の方を採用する.通常API 1.00程度であるが,APIが0.7以下では間歇性跛行を,0.3以下では安静時疼痛,潰瘍・壊死をきたすとされている.その他の検査には指尖容積脈波,経皮的酸素分圧,RIアンギオグラフィー,133Xクリアランス法,近赤外線分光法,動脈撮影法がある.これらの中で,現在でも最も重要なものは動脈撮影法である.動脈造影で壁不整,蛇行,狭窄・閉塞が明らかに証明される.最近では比較的無侵襲なDSA(digital subtraction angio-graphy)が広く臨床に応用されるようになり,本症の臨床診断,患者follow-upに重宝である.鑑別すべき疾患として閉塞性血栓血管炎,Aortitis syndrome,脊椎管腔狭窄症などがある.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, Fontaine重症度分類, API, 血管撮影法, 近赤外線分光法


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。