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日外会誌. 97(6): 449-454, 1996


特集

食道癌外科治療の実際

食道癌手術の術後管理と処置
(3)縫合不全に対する外科的処置

大分医科大学 第2外科

内田 雄三 , 村上 信一 , 野口 剛 , 橋本 剛

I.内容要旨
縫合不全が生じた際の全身的処置として,①絶飲食,②IVHあるいは腸瘻栄養法の実施,③糖尿病などの合併疾患のコントロール,④XIII因子欠乏症にはその補給,⑤術後貧血,肺合併症の治療などは何れの症例に対しても先ず第1に行われる.縫合不全に対する局所的な処置は極めて重要であり,その時期および方法の選択を誤ると膿瘍を形成し,縦隔炎,膿胸,さらには敗血症,多臓器不全に陥って生命の危険にさらされることになる.
1)縫合不全発生後初期の外科的処置
minor leakage:後縦隔あるいは胸腔内吻合例では絶飲食,再建臓器内減圧,抗生剤投与によりほとんどの症例が1~2週間で自然に閉鎖する.頸部吻合例でも同様であるが,皮膚の発赤を来し,膿瘍形成が疑われるものでは皮膚に小切開を加え体外ヘドレナージする.
major leakage:後縦隔または胸腔内吻合例では躊躇なく再開胸し,食道外瘻造設ならびに膿瘍腔ドレナージ,腸瘻造設を行い,二期的に別のルートで再建する.頸部吻合側においても外瘻を造設し,ストーマケアーに準じて管理する.
2)縫合不全発生後晩期の外科的処置
直接縫合閉鎖:ストーマ周囲の皮膚を大きく切除し,消化管はその壁構造が完全な部分で切除して創縁を新鮮化し,2層に縫合閉鎖する.皮膚欠損部は有茎筋皮弁で補填する.
遊離空腸パッチによる補填術:吻合部後壁(1/2)が残存する症例では,前壁欠損部を遊離空腸パッチで補填し,その上を有茎筋皮弁で覆う.3例に施行した.
筋皮弁による補填術:空腸を採取しなくて良い分だけ侵襲が小さい.
遊離空腸間置術:吻合部の2/3周以上が離断された状態のものでは食道側,再建臓器側ともに追加切除し,遊離空腸を間置する.
ルート変更術:胸腔内吻合術後のminor leakageを食道外瘻造設術で乗り切った症例に対して二期的に再建術を行う.
食道癌切除後の縫合不全の対策について,とくに遊離空腸パッチによる補填術について自験例をもとに述べた.

キーワード
食道再建術, 縫合不全, 外科的処置, 遊離空腸パッチ法


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