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日外会誌. 97(4): 302-307, 1996


特集

胃癌外科治療の最近の進歩

進行胃癌におけるNo.16リンパ節郭清の治療成績とその問題点

東京都立駒込病院 外科

北村 正次 , 荒井 邦佳 , 岩崎 善毅

I.内容要旨
胃癌大動脈周囲リンパ節(No. 16)郭清(D4)427例を対象に,No. 16転移例の臨床病理学的特徴と予後ならびに術後早期の侵襲の程度について検討した.No. 16転移率は深達度とともに高く,3型,4型で高く,低分化型で有意に高率であった.癌の局在とNo. 16の転移部位との関係では郭清部位を特定できなかった.従って,胃亜全摘例の大動脈左側の郭清が問題となる.No. 16転移例(P0H0)の5生率は14%であったが,このうちn3(一)群の予後は30%であり,n3(+)群より有意に良好であった(p<0.05).胃全摘P・S例におけるD4とD2郭清の侵襲度の比較では,D4で出血量・手術時間・浸出液量が有意に程度が高く,血清アルブミン値の低下も著明であった.胃亜全摘例では出血量・手術時間では大きな差を認めなかったが,D4では浸出液量は有意に多く,アルブミン値低下も有意差を認めた.術後合併症では胃全摘のD4で膵断端周囲の膿瘍が多く,手術関連死4例を認めた.胃亜全摘例では両群に差を認めなかった.以上より,郭清の適応をss以深,N2以上と規定し,厳密なリスク判定のもとに施行している.D4郭清の臨床的意義についてはD4とD2の比較臨床試験(現在施行されている)の結果が待たれる.

キーワード
進行胃癌, 大動脈周囲リンパ節郭清, 郭清効果, 合併症


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