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日外会誌. 97(4): 291-296, 1996


特集

胃癌外科治療の最近の進歩

早期胃癌に対する幽門保存胃切除術(PPG)

東北大学 医学部第1外科

佐々木 巌 , 椎葉 健一 , 内藤 広郎 , 松野 正紀

I.内容要旨
幽門保存胃切除術は1964年に槇,白鳥らにより胃潰瘍に対する機能温存術式として開発,臨床応用された術式であり,幽門輪を含めた幽門部の一部分温存することで術後胃内容排出機能をより生理的に得ることができる.最近,早期胃癌に対しても術後の生理機能を重視した手術が考慮されるようになり,幽門保存胃切除術が早期胃癌に対する縮小手術の一つとして多くの施設で行われるようになった.現在,各施設で早期胃癌に対して行われている幽門保存胃切除術の中には消化性潰瘍に対する術式と同様なものから,リンパ節郭清を加える際に自律神経温存を意識するものやD2に準じたリンパ節郭清を加えるものなど様々なレベルの術式が試みられている.準D2リンパ節郭清を付加する術式については適応範囲がいちばん広い.
幽門保存胃切除術を早期胃癌に対する手術として行う場合に最も問題となるのは適応症例の選択である.m癌についてはいずれも本術式の適応に含める施設が多いが,sm癌の適応にっいてはリンパ節転移を無視出来ないため,各施設ごとに行っているリンパ節郭清範囲に応じて,腫瘍型(陥凹型,隆起型),大きさ,深達度,組織型,占拠部位などとリンパ節転移率との成績から検討されている.一方,術前の深達度診断の制度は約70%程度であり,手術適応の選択についてはこれらのリスクも十分考慮される必要がある.
現時点では本術式に関する治療成績の蓄積は未だ十分ではないが,今後,本術式が根治性が高く安全でかつQOLが高いsurgical optionとして十分な評価を得ることが期待される.

キーワード
早期胃癌, 幽門保存胃切除術, 迷走神経切離, 幽門機能


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