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日外会誌. 97(3): 227-233, 1996


特集

虚血性心疾患における治療の選択

高度低左心機能の虚血性心筋症(lschemic cardiomyopathy)に対する冠動脈バイパス術の適応と限界及び成績

東京女子医科大学日本心臓血管研究所 循環器外科

遠藤 真弘 , 佐藤 渉 , 西田 博 , 小柳 仁

I.内容要旨
著しく高度低左室機能を伴う虚血性心筋症の自然歴は劣悪で,欧米では心移植が行なわれている.本邦では心移植の道は閉ざされており,CABGを選択せざるを得ない.我々は虚血性心筋症の定義を(1)EF 20%以下,又は(2)EF 30%以下で虚血性僧帽弁逆流を伴う例とした.
(1)EF≦20%の単独CABG
1970~1995年8月に施行された待期的,初回,単独CABGは1,640例で,この内,EF≦20%の症例は29例で,全体の僅か1.8%であった.男女比は28/1,平均年齢:55.6±8.6歳,平均EF:16±3.9%,平均EDVI:156.8±68.8ml/M2,平均NYHA:class 3.1±0.8,障害枝数:DVD 24%,TVD 62%,LMT+TVD 17%であった.
結果:院内死亡は2例(6.9%)であり,EF>41%群との間にX2 testでP=0.041と有意であるが,FishertestではP=0.0983と有意差は無かった.長期遠隔成績では全死亡回避率で1年,3年,5年でそれぞれ93%,93%,87%であった.この成績は米国のUCLAにおける本症の心移植例の遠隔成績を上まった.
(2)EF≦30%で虚血性MRに対するCABGプラス弁外科手術例
対象例は7例で男女比5/2,平均年齢60.6±0.8歳,平均EF 23.1±5.4%,MRの程度は,Sellers II度3例,III度4例であった.
結果:全例にCABGを施行し,7例中,1例のみに弁置換,残りは全て弁形成術を施行した.院内死亡は無く,遠隔成績では平均観察期間は16カ月と短いが全例,生存している.

キーワード
Ischemic cardiomyopathy, CABG

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