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日外会誌. 97(2): 152-159, 1996


特集

外科と糖鎖抗原-癌関連糖鎖抗原の意義-

消化器癌におけるムチン型糖鎖抗原

札幌医科大学 第1内科

今井 浩三 , 牧口 祐介

I.内容要旨
ムチン型糖鎖抗原は,正常及び癌組織において発現していることが知られているが,癌化により,ムチン分子の発現がさまざまなレベルで正常組織と比べ変化することが明らかとなってきた.
癌化に伴うmRNAレベルでの変化により,ムチンコアペプチドの転換が起こり,胃癌において胃型のムチンより腸型のムチンに変わることが明らかとなった.さらにムチン分子に含まれる糖鎖にも,短縮あるいは消失の傾向がみられることが明らかとなり,これら癌化に伴うムチン分子の変化が,腫瘍細胞に種々の変化をもたらすと考えられている.
特に,ムチン分子の糖鎖構造の変化は腫瘍の成長,進展に対し,大きな影響を及ぼしており,腫瘍細胞において観察される脱糖鎖は,ムチンの発現により弱められた腫瘍細胞に対する免疫原性を,高める方向に働くことが明らかとなった.また,癌化に伴い発現する未成熟型の糖鎖をもつムチン分子が転移促進に働き,癌の予後を左右する因子として重要であることが示された.さらに,ムチン分子上の糖鎖が腫瘍細胞の抗腫瘍剤に対する抵抗性の獲得にも関与する可能性が示唆されている.
このように,癌におけるムチン分子の機能は多岐にわたっており,腫瘍の悪性度に対しても大きく関与している.ムチン分子の機能を決定する因子として糖鎖は重要であり,今後,この分野に関するさらなる研究の進歩が期待される.

キーワード
ムチン, 糖鎖抗原, 腫瘍免疫, 癌転移


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