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日外会誌. 97(2): 145-151, 1996


特集

外科と糖鎖抗原-癌関連糖鎖抗原の意義-

腫瘍マーカーとしての糖鎖抗原

国立がんセンター中央病院 薬物療法部長

大倉 久直

I.内容要旨
癌化や癌の進展に伴って出現する糖鎖異常は箱守以来の研究によってその構造までが明かとなり,その幾つかは腫瘍マーカーとして日常の臨床検査に用いられている.糖鎖抗原マーカーには,I型糖鎖の2-3シアリルルイスA,母核構造糖鎖のシアリルTn,II型糖鎖のシアリルSSEA1,糖鎖構造の明らかでないNCC-ST-439などがある.糖鎖腫瘍マーカーの現状と限界を主要な臓器がん毎にステージ別陽性率と共に示した.
糖鎖抗原の腫瘍マーカーは,同じ名称の試薬でも,システム毎に測定値が異なること,類似の抗体を使った試薬が開発され同一名称や違った名称で流通していることなどのために,利用に一部混乱を生じている.この現状をシアリルルイスAを例として示した.すなわち,シアリルルイスAグループにはCA19-9ばかりでなく,類似の糖鎖を抗原エピトープとするKM01,CA50,SPan1などの腫瘍マーカーがあり,さらに同じCA19-9という名の診断薬でも測定システム毎に異なる測定値が得られている.最後にシアリル糖鎖と細胞接着因子との特異的な結合が腫瘍の遠隔転移に関係し患者の予後不良の原因であるという仮説を紹介する.

キーワード
腫瘍マーカー, 糖鎖抗原, モノクローナル抗体, シアリルルイスA, 消化器癌


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