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日外会誌. 97(1): 83-88, 1996


特集

門脈圧亢進症に対する治療の現況

Interventional Radiologyの現況
-TIPS-

1) 大阪市立大学 医学部放射線医学教室
2) 和歌山県立医科大学 放射線医学教室

山田 龍作1) , 甲田 洋一1) , 羽室 雅夫1) , 林 正昇1) , 中村 健治1) , 谷畑 博彦2) , 木村 誠志2) , 佐藤 守男2)

I.内容要旨
門脈圧亢進症に対する新しい治療法,経皮的肝内門脈静脈短絡術Transjugular intrahepatic portosystemic shunt・TIPSは1992年にはじめて本邦に導入された.
この方法は,1969年にJ. Röschらにより提案されたものであるが,長らく臨床応用されるには至らなかった.しかし,その後,血管形成術用balloon catheterが開発され,expandable metallic stentが出現するに及んで,1988年にRichterらにより最初の臨床成功例が報告された.
著者らは,1992年から1995年にかけ3年間に35例の肝硬変門脈圧亢進症,食道・胃静脈瘤患者にTIPSを試み31例89%に成功した.
これら31例の成功例を長期間経過を観察し,本法が門脈圧亢進症の治療となり得るか否かを検討した.
すなわち,本法の手技上の問題点,門脈圧減圧効果,内視鏡所見の変化,腹水の減少効果,肝機能に与える影響,シャントの長期開存率,合併症などにつき検討を行った.
その結果,本法は門脈圧亢進症だけでなく食道胃静脈瘤に対する効果的な治療法で,難治性腹水に対しても有効で,患者に対して侵襲の少い,シャントの長期開存を期待出来る,比較的安全な門脈下循環シャント術であることが判った.

キーワード
門脈圧亢進症, 食道・胃静脈瘤, 経皮的肝内門脈静脈短絡術, TIPS , インターベンショナル・ラディオロジー, 肝硬変

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