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日外会誌. 97(1): 70-77, 1996


特集

門脈圧亢進症に対する治療の現況

Interventional Radiologyの現況
PTO・TIO

1) 日本医科大学 第1外科
2) 日本医科大学 放射線科

田尻 孝1) , 恩田 昌彦1) , 山下 精彦1) , 金 徳栄1) , 梅原 松臣1) , 小嶋 隆行1) , 松崎 栄1) , 隈崎 達夫2)

I.内容要旨
本法はいずれも門脈圧亢進症によって発生した遠肝性副血行路をinterventional radiologyによりその上流から遮断する方法である.1)門脈到達法としては経皮経肝法(PTO)と経回結腸法(TIO)にわけられるが,術前の全身状態と血行動態を十分把握して,両者の利点欠点をよく理解した上での適切な手技の選択により高い成功率と確実な効果が得られる.2)食道静脈瘤に対して本法をEISと併施すると,EIS単独施行例に比しEISの必要施行回数,硬化剤の使用量ともに少なく,しかも追加治療までの期間が明らかに延長する.特にChild Cあるいは肝癌合併例での有効率,効果の持続率がEIS単独施行例に比し有意に良好である.3)EISでの難治例に対し本法を追加するとその後のEISの効果が著明にみられ,しかもその効果が長期にわたり持続する.4)胃噴門部静脈瘤は食道静脈瘤を合併することが多いが,EISと本法を併施すると胃静脈瘤の消失率が向上し,しかもその後の再発が有意に抑えられる.5)門脈体循環短絡路によって発症した胃穹薩部静脈瘤あるいは猪瀬型肝性脳症に対し,本法を単独施行あるいはBRTOと併施することで確実な静脈瘤の消失と脳症の改善が得られる.以上のごとく,本法は手術における血行郭清あるいは血行遮断に例えられ,他の保存療法に本法を併施すると,お互いの欠点を補い夫々の効果の確実性,持続性が高まる.したがって特にpoor risk症例における他の保存療法の補助療法としても今後大いに活用すべき方法といえる.

キーワード
門脈圧亢進症, PTO , TIO, 食道胃静脈瘤, 肝性脳症


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