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日外会誌. 96(10): 685-694, 1995


原著

部分肝切除術後腹腔内感染ラットにおける肝マクロファージ機能に関する実験的研究

広島大学 医学部第1外科
広島大学 医学部総合診療部

沖田 光昭

(1994年10月3日受付)

I.内容要旨
肝切除後感染は手術成績を左右する重篤な合併症である.そこで感染防御に重要な役割を果たすと考えられる肝マクロファージ(肝Mφ) を中心に肝切除後腹腔内感染時の感染防御能の変動を検討する目的で以下の実験を行った.Wistar系雄性ラットを,単開腹(S群),70%肝切除(H群),2×105CFU/mlの大腸菌を腹腔内投与(E群),70%肝切除後に2×105CFU/mlの大腸菌を腹腔内投与(HE群)の4群に分け,肝MΦのスーパーオキサイド(O2-),インターロイキン-1(IL-1),tumor necrosis factor (TNF)産生能および血中エンドトキシン値(ET)を経時的に測定した.また,H群,HE群における肝再生を知る目的でmitotic index (MI) を測定した.ET値は,HE群,H群,E群,S群の順に高値を示し,肝切除後感染時にはETの処理能力が低下することが示された.肝MφのO2-産生能は,E群,HE群では早期に上昇し感染によると考えられたが,H群,HE群では48時間後でも上昇し,肝切除に対する反応と考えられた.TNF産生能は,O2-産生能に類似の変化を示し,感染がTNF産生に関与することが示唆された.IL-1産生能は,H群で6時間までは低値を示し,また,MI値の動向からIL-1が肝再生に抑制的に作用する可能性が考えられた.しかし,12時間以降はE群と多少の違いはあるものの上昇した.しかし,HE群では全経過で低値であった.また,肝切除48時間後の肝Mφを高濃度のlipopolysaccharide(LPS)で刺激すると,TNF活性が濃度依存性に上昇したが,IL-1活性は逆に低下した.
以上より,肝切除に感染が加わると肝MφのO2-産生能,TNF産生能が保持されていても,IL-1産生能は低下することが判明した.

キーワード
肝マクロファージ, TNF, IL-1, O2 -産生能, 肝再生

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