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日外会誌. 96(7): 448-455, 1995


原著

胃癌細胞の制癌剤感受性試験における腫瘍
細胞純化の意義に関する研究

1) 神戸大学 医学部外科学第1講座
2) 近畿大学 医学部外科学第2講座

森下 透1) , 加藤 道男2) , 中村 毅1) , 斎藤 洋一1)

(1994年3月18日受付)

I.内容要旨
制癌剤感受性試験において腫瘍細胞純化の影響を検討する目的で,胃癌原発巣17例,胸腹水3例を対象に,従来のMTT法とCentrifugal elutriation(以下CEと略)systemを用いて癌細胞純度を高めたMTT法とを実施して比較検討した.CEによって細胞浮遊液中の癌細胞純度は施行前では原発巣36.1±10.0%,胸腹水37.6±5.3%であったのが,それぞれ75.4±5.0%,94.9±1.6%に上昇させることができ,しかも回収率はそれぞれ51.9%,61.9%と良好であった.癌細胞純度の上昇によって,MTT法による制癌剤感受性試験の結果に差異が生じた症例を20例中10例に認めた.これらの症例は,腫瘍細胞純化により差異を認めなかった症例と比較して,CE施行前の癌細胞純度が30%未満の症例が多かった.また,未分化型癌,INFγの症例には癌細胞純度が30%未満の症例が多く,scirrhous typeの症例はmedullary type,intermediate typeの症例に比べて癌細胞純度が低い傾向にあった.従って未分化型癌,INFγ,及びscirrhous typeの症例は,従来のMTT法では腫瘍細胞の制癌剤感受性を反映していない可能性があり,CEによって癌細胞の純度を高めて制癌剤感受性試験を施行する必要があると思われた.原発巣17例について組織学的分化度別にADM,THP,MMC,5FU,CDDPに対するSD活性を検討した結果,分化型癌,未分化型癌ともに各薬剤に対する感受性に差は認められず,組織学的特徴から感受性を推定することはできなかった.従って個々の症例における癌細胞の制癌剤感受性に基づいて,使用すべき抗癌剤を選択する必要があると思われた.

キーワード
制癌剤感受性試験, MTT assay, 胃癌, Centrifugal elutriation, 癌細胞純度


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