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日外会誌. 96(1): 26-30, 1995


原著

ヌードマウスを用いたヒト大腸癌肝転移モデルにおける血小板凝集抑制薬Forskolinの転移抑制効果

東京慈恵会医科大学 第1外科

吉澤 穣治 , 吉田 和彦 , 藤川 亨 , 田部 昭博 , 桜井 健司

(1991年11月12日受付)

I.内容要旨
血小板凝集は転移の過程の初期段階において,癌細胞が標的臓器に着床する上で重要な役割を演じていると注目されている.そこでヒト大腸癌肝転移モデルを用いて,強い血小板凝集抑制薬であるForskolinの転移抑制効果を検討した.さらにヒト大腸癌細胞存在下におけるForskolinの血小板凝集抑制効果を検討した.
ヒト大腸癌転移株HT29LMMの細胞を3~4×106個ヌードマウスの脾臓内に移植し,肝転移モデルを作製した.Forskolinは癌細胞脾内移植の30分前,および移植24時間後に10mg/kgを腹腔内投与した.またコントロールとして,生理食塩水を同様に投与した群を設けた.Forskolin投与群とコントロール群との肝転移形成程度の比較は,肝転移巣総爪量,および占拠率を用いて行った.Forskolin投与群はコントロール群と比較して,肝転移巣総重鼠,及び占拠率において有意に(p< 0.05)低値を示した.(0.36 ± 0.33g (SD) vs 3.36 ± 1.31g・8.22 ± 7.91% vs 67.9 ± 23.2%).またIn vitroにおいて,HT29LMM細胞存在下でForskolinの血小板凝集抑制効果が認められた.
以上より,血小板凝集抑制薬であるForskolinは,癌の転移過程において血小板の凝集を阻害することにより,ヒト大腸癌肝転移を抑制することが示唆された.

キーワード
大腸癌, 肝転移, Forskolin, 血小板凝集


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