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日外会誌. 95(12): 893-898, 1994


原著

人工心肺手術における血中 G 因子系リムルス反応陽性物質の変動
-その由来に関する検討-

岩手医科大学 第3外科
*) 岩手医科大学 細菌学

中島 隆之 , 向井田 昌之 , 石橋 和幸 , 千葉 覚 , 川副 浩平 , 稲田 捷也*) , 吉田 昌男*)

(1993年7月6日受付)

I.内容要旨
人工心肺を用いた手術(CPB手術)後の血漿ではリムルス反応が陽性を示す.これはエンドトキシンによるのではなく,リムルスカスケード反応におけるfactor Gを介する活性(G pathway reactive activity:以下GPRA)によるのではないかと考えられている.しかし,GPRAが何に由来するのかは明らかにされてはいない.今回,血漿をNewPCA法を用いた処理後に,CPB中のGPRA(トキシカラー法測定値一エンドスペシー法測定値)の変動について調べ,疾患による特異性がないかを検討した.対象はCPB手術を施行した32例で,解離性大動脈瘤6例(A群),虚血性心疾患9例(B群),弁膜症8例(C群),先天性心疾患7例・左房粘液腫2例(D群)である.全例の検討では,血中GPRAはCPB終了時に415pg/mlと最高値をとり,以降減少した.一方エンドトキシンは全経過で正常範囲の変動であった.疾患別検討では,CPB終了時の血中GPRAはA群:761±180pg/ml,B群:646±341pg/ml,C群:230±186pg/ml,D群:113±65pg/mlとA群とB群はC群,D群より有意(p<0.05~0.005)に高値であった.また,CPB中のGPRA上昇率(GPRA上昇値/CPB時間:pg/ml/min)もA群(3.9±0.8)とB群(2.6±1.9)は,C群(1.0±0.9),D群(0.8±0.4)より有意(p<0.05~0.005)に高値であった.一方CPB回路からのGPRAの混入はほとんどなかった.
以上より解離性大動脈瘤や虚血性心疾患手術においては血中GPRAが上昇しやすいことがわかった.疾患別に血中GPRA上昇の程度に差があることより,GPRAが生体から由来する可能性が示唆された.どの臓器に含有され,どのような機序で血中に出現するのか今後さらに検討する必要がある.

キーワード
人工心肺, リムルス反応, エンドトキシン, NewPCA 法

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