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日外会誌. 95(11): 823-833, 1994


原著

カルチトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の肝阻血解除後の血行動態におよぼす影響に関する実験的研究

*) 自治医科大学付属大宮医療センター 外科
**) 自治医科大学 消化器・一般外科(指導:宮田道夫教授)

山本 宏*) , 安田 是和**)

(1993年6月8日受付)

I.内容要旨
カルチトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide : CGRP)の血行動態におよぼす影響を雑種成犬を用いて経時的に観察し,次に肝阻血モデル犬を用いてCGRPの肝循環改善剤としての有効性を実験的に検討し,以下の結論を得た.
1.平均動脈圧と心拍数はCGRPの用量に依存し,それぞれ減少および増加傾向を示した.CGRP 10-9Mを投与すると平均動脈圧が負荷前値の56.8%(p<0.05)と最大の減少を示したが,心拍数は106.3%とわずかな増加(p<0.05)であったことから,CGRPは血圧低下時にも圧受容体反射を抑制し,心収縮力を維持する作用があるものと推察された.
2.CGRP 10-10Mを投与すると平均動脈圧は負荷前値の80.4%に減少(p<0.05)したが,上腸間膜動脈,門脈,肝動脈の各血流量はそれぞれ130.1%,121.2%,130.2%と有意な増加(p<0.05)を示した.なかでも,上腸間膜動脈の血流量は用量依存性に増加し,CGRPに最も鋭敏に反応を示したことからCGRPは上腸間膜動脈に特異的に作用すると考えられた.
3.肝動脈,門脈の圧迫による肝阻血状態を来す実験をおこなったところ,肝阻血解除後CGRPが肝循環に与える最も大きな影響は肝動脈の血管抵抗の減少と血流量の増加によって肝血流量を早期に維持しようとする働きであることが示唆された.
以上より,CGRPは肝動脈血流量維持に有効な肝循環改善剤として将来,肝臓外科領域を中心に臨床応用が期待できるものと考えられた.

キーワード
CGRP, Hepatic Ischemia, Hemodynamics


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