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日外会誌. 95(9): 699-703, 1994


原著

内胸動脈グラフト内径の変化
-術直後と5年後との比較-

神奈川県立循環器呼吸器病センター 心臓血管外科

内田 敬二 , 戸部 道雄 , 坂本 哲 , 浜田 俊之 , 久保 誠秀 , 佐藤 順

(1993年4月27日受付)

I.内容要旨
冠状動脈バイパス手術に使用した23本の内胸動脈グラフト(以下ITA)の内容を,術後早期と5年後の造影所見とから比較検討した.近位部内径は術後早期が2.38±0.48mm,5年後が2.48±0.47mmと変化なかったが,遠位部内径は早期が1.69±0.39mm,5年後が1.96±0.58mmと有意に(p<0.05)増加していた.この増加は特に,狭窄が高度でITAに競合する血流がない群で1.80±0.35mmから2.27±0.42mmへと著しかった(p<0.01).
狭窄が有意でなく競合する血流があった12本のITA中5本が5年後string signを呈した.string signとは競合する血流によってITAの流量が減少し,ITAが退縮した結果と思われた.これらの症例で狭心症再発はみられていない.軽度な狭窄に対してITAと静脈グラフトのどちらを用いるかは,他の部位の狭窄を含め全体の手術計画の中で考慮しなければならないが,個々の症例にとって重要な枝ならば,狭窄の進行を念頭においた対処が必要である.このような場合,われわれは積極的にITAを使用していく方針である.

キーワード
冠状動脈バイパス手術, 内胸動脈, 内径の変化, 競合血流, string sign


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