[書誌情報] [全文PDF] (4825KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 95(9): 669-677, 1994


原著

急性膵炎における感染および重症化機序に及ぼす腸内細菌の関与についての実験的検討

東北大学 医学部第1外科

岩崎 剛一 , 武田 和憲 , 砂村 眞琴 , 小針 雅男 , 松野 正紀

(1993年3月30日受付)

I.内容要旨
急性膵炎の膵壊死組織感染における腸内細菌の関与についてラット実験急性膵炎モデルを用いて検討した.膵炎作成は3%sodium taurocholateの膵管内注入により行った.急性膵炎単独群(AP群),膵炎+大腸全摘群(TCAP群),経腸栄養食による前処置後に膵炎を作成した群(ED-AP群)の3群に分け膵炎作成後6,12,24時間で膵,肝,脾,腸間膜リンパ節,動脈血,腹水の細菌培養,動脈血中のエンドトキシン定量,各時間での生存率につき検討した.
膵壊死組織の細菌培養については,AP群で6,12,24時間でそれぞれ23.1%,36.3%,40.7%と高率に陽性であり,EDAP群ではAP群に比べさらに有意に高率に陽性であった(p<0.005).これに対しTCAP群では6,12時間では細菌は検出されず,24時間でも陽性率は5%に過ぎず,AP群に比べ有意に低値であった(p<0.005).肝,脾,腸間膜リンパ節の細菌培養についても膵と同様にTCAP群で細菌感染は有意に抑制された.しかし動脈血および腹水中の細菌培養は,3群間で有意差なく,いずれの群も高率に感染がみられた.動脈血中のendotoxin定量では,膵炎作成により血中endotoxin値は上昇するがTCAP群ではAP群,EDAP群に比べ上昇はわずかであり,24時間ではEDAP群との間に有意差を認めた(p<0.05).生存率についてはTCAP群がAP群,EDAP群に比べ有意に生存率の改善がえられた(p<0.005,p<0.05).
以上よりラット実験急性膵炎における膵壊死組織感染には腸内細菌,特に結腸内細菌のbacterial translocationが関与しており,また膵炎重症化機序の重要な因子となっている可能性が示唆された.

キーワード
出血壊死性膵炎, 感染, 大腸全摘術, bacterial translocation


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。