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日外会誌. 95(8): 512-520, 1994


原著

肝分離灌流による無酸素下温熱化学療法の開発に関する実験的研究

奈良県立医科大学 第1外科

堀川 雅人 , 中島 祥介 , 金廣 裕道 , 中野 博重

(1993年7月18日受付)

I.内容要旨
肝分離灌流による無酸素下温熱化学療法の開発を目的に,その実験モデルを作成し,肝および全身におよぼす影響につき検討した.
実験動物としてビーグル犬を用いた.肝を周囲組織より完全に遊離後,送液路として門脈を,脱液路として肝下部下大静脈を用いて生体内で肝を分離灌流した.実験群I:無酸素下肝温熱灌流群(n=5);灌流液として42℃加温乳酸化リンゲル液を用い, 70cmの高さより流量75~100ml/分にて30分間肝を分離灌流した.流出液はすべて体外へ廃棄した.実験群II:無酸素下肝温熱灌流化学療法群(n=5); I群の灌流液中にマイトマイシンC (以下MMC) を加え10μg/mlの濃度とした.
肝温度については両群とも灌流開始12分後に41℃前後となり灌流終了時まで維持され,食道温には変化を認めなかった.両群において灌流中低下したAKBRは灌流終了後1時間目にはすでに前値に回復した.肝組織pHは灌流開始前7.13前後で灌流開始と同時に低下しはじめ最低値5.97±0.02となるが,灌流終了6分後には前値に回復した.I群においてGOT,GPT, ALPは術後4日目まで上昇を認めたが, 14日目にはほぼ術前値にまで回復し,amylase, BUN, Crには変動を認めなかった. II群ではGOT, GPT群はI群より有意に高値 (p<0.01) となるものの6日目以降差異を認めず, ALPについてはI群との間に差を認めなかった.肝分離灌流中および後にMMCの全身循環への漏出を認めず,全身への影響はI群と同様認めなかった.肝組織像は両群とも7日目にはほぼ回復し, 14日目以降には異常を認めなかった.
肝分離灌流による30分間42℃無酸素下温熱化学療法による肝障害は一過性で,全身への影響は認めず,その安全性が確認され本手技の臨床応用の可能性が示唆された.

キーワード
転移性肝癌, 微小肝転移, 肝分離灌流, 温熱化学療法, Hypoxia

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