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日外会誌. 95(8): 485-495, 1994


原著

手術侵襲後にみられる食細胞機能の変動に関する検討
-末梢血多核白血球, Monocyte, 及び腹腔 Macrophage の機能を中心に-

広島大学 医学部第1外科教室(主任:松浦雄一郎教授,広島大学医学部第1外科教室)(指導:横山 隆教授*,*広島大学医学部附属病院総合診療部)

今村 祐司

(1993年1月4日受付)

I.内容要旨
手術侵襲後にみられる食細胞機能の変動を手術侵襲度による相違とともに明らかにする目的で,消化器手術症例35症例を対象に,周術期の末梢血多核白血球(PMN) の活性酸素生成能と末梢血Monocyte (Mo) および腹腔滲出Macrophage (MΦ) のIL-1β, TNFα産生能を測定し,手術時間2時間未満群 (OP<120, n=8)および2時間以上群 (OP≧1120, n=27) の2群に分けて比較検討した.さらに,OP≧120群の症例でPMN のMac-1表現量と血中G-CSF 値の変化を測定し,PMN 機能とCytokineの関連について検討した.
PMN の活性酸素生成能は術後に亢進し,OP≧120群ではOP<120群より大きな変化を示した.またOP≧120群で認める活性酸素生成能の亢進は手術終了直後から末梢血PMN数の増加と並行し,PMNのMac-1表現量の増加と血中G-CSF値の上昇を認めた.MoのIL-1産生能は両群とも術後8時間から術前値に対して有意に亢進し,術後24時間で最大 (106.3±23.3pg/ml/1 × 104 cells) となり,特にOP≧120群ではOP<120群に比べ,より大きな亢進を示した.TNF 産生能は両群ともに術後4 時間から亢進し,術後7日目まで高値であった (最大値1.63±0.31ng/ml/1 ×105 cells). OP≧120群で採取した腹腔MΦのIL-1, TNF産生能は術後4時間から亢進し,術後8時間で最大値 (IL-1 378.2±156.5pg/ml/1 × 104 cells, TNF 1.58±0.52ng/ml/1 × 105 cells) を示した.しかし,両群とも血清中にIL-1β, TNFαは検出できなかった.
以上の結果は,手術侵襲後にみられる食細胞機能の変化として,術後24時間までに末梢血Mo,腹腔MΦにIL-1, TNF産生能の亢進が,手術侵襲度の大きさに対応して誘導され,同時にCytokine Networkを介してPMNのpriming現象 (Mac-1表現量の増加と活性酸素生成能の増強) が生じることを示し,過大な侵襲後に生じる感染症対策として食細胞機能をtargetにおく免疫調節療法を考える上で重要な基礎となるものと考えられる.

キーワード
多核白血球, Macrophage, 活性酸素生成能, Cytokine, 手術侵襲

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