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日外会誌. 95(6): 394-399, 1994


原著

生体腎移植ドナーにおける腎提供後の経時的残存腎機能の推移について

1) 東北大学 医学部第2外科
2) 仙台社会保険病院 

佐藤 耕一郎1) , 里見 進1) , 大河内 信宏1) , 渋谷 浩1) , 岡崎 肇2) , 田口 喜雄1) , 森 昌造1)

(1992年12月5日受付)

I.内容要旨
生体腎移植ドナーの腎機能の変化を経時的に追跡し,腎提供後腎機能が悪化するかどうかを検討した.対象は, 1968~1989年に東北大学第2外科と仙台社会保険病院で行った生体腎移植ドナーのうち,腎機能検査希望者100名である.検査項目は血清クレアチニン(以下Scr),血中尿素窒素(以下BUN),クレアチニンクリアランス(以下Ccr), Renal index, 高血圧者の割合である.さらに蛋白尿についての経時的変化と,尿蛋白正常群と異常群におけるScr,Ccrの経時的変化の違い,高血圧ドナーと非高血圧ドナーにおける尿蛋白量の違いを検討した.生存率は98%であり,死亡原因は腎提供と無関係であった.慢性糸球体腎炎疑い4例,ネフローゼ症候群疑い1例,慢性腎不全1例が発見され,家族性因子によるものか,腎提供によるものかは不明であったが,腎提供後の厳重な経過観察が必要と思われた. Scrは,術直後値が一番高値をしめし,以後有意に漸減した. BUNは,術後2週値がピークで以後有意な変化はなかった. Ccrは,術後2週値と比較し検査時で増加が認められ,術前値と比較し約80%まで回復していた. Rena lindexにおいて有意に増加が認められ,腎は拡大していると考えられた.貧血を持つドナーのエリロボニチンの量は正常範囲内であり,腎機能の低下によると思われる貧血は認められなかった.尿蛋白異常者の割合は術前,術直後と比較し,検査時で有意に増加していたが,尿蛋白異常群における腎機能を正常群と比較しても両群間に差は認められなかった.高血圧は,コントロール群と比較し有意差はなかった.しかし,高血圧ドナーにおける尿蛋白量は有意に非高血圧ドナーより増加しており,収縮期血圧と尿蛋白量に正の相関が認められた.以上より腎移植ドナーの腎機能は,腎提供後より経時的に改善傾向が認められるが,逆に蛋白尿は有意に増加を示し,原因として高血圧が考えられた.

キーワード
生体腎移植, ドナー, 腎提供, 腎機能


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