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日外会誌. 95(6): 376-381, 1994


原著

急性膵炎時の肺障害機構における肺マクロファージ活性化の意義について

神戸大学 医学部第1外科

原之村 博 , 竹山 宜典 , 豊川 晃弘 , 斎藤 洋一

(1993年1月28日受付)

I.内容要旨
今回,我々は従来in vitroでのマクロファージ(MΦ)機能測定に使用されてきたnitro blue tetrazolium (NBT) を用いて,実験急性膵炎における肺MΦの活性化状況をin situならびにin vitroで解析した.
in situ NBT法ではセルレイン大量投与による浮腫性膵炎の初期において既に肺MΦが活性化状況にあることを見出した.これは,肺MΦに取り込まれたNBTがMΦにより産生されたfree radicalにより還元されてformazanの沈着を生ずることを組織学的に確認したものである.
さらにin vitro NBT法では気管支肺胞洗浄液より肺MΦを回収しphorbol myristate acetate (PMA) 刺激下に還元されたformazanを吸光度計にて計測し単位細胞数あたりのfree radical産生能を測定した.その結果,膵炎作成後吸光度は経時的に上昇し始め, 24時間後には0.067±0.016/1×104 cells (p<0.001) と頂値に達し以後低下した.また同時に測定した動脈血ガスではPaO2のみが膵炎作成28時間後に83.5±16.6mmHgとなり対照群に比し有意に (p<0.05) 低下し以後正常化した.
以上の結果より,セルレイン 膵炎の様な軽症浮腫性膵炎においても活性化された肺MΦが肺間質や肺胞腔内に動員されており,この動きに呼応してPaO2のみが対照群に比べて有意に低下したことは膵炎初期にみられる肺障害に肺MΦの活性化現象が関与していることを強く示唆するものと思われた.

キーワード
急性膵炎, 肺障害, 肺マクロファージ活性化, セルレイン膵炎, free radical


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