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日外会誌. 95(5): 348-353, 1994


原著

体外循環に伴う肺障害に関する臨床的研究
-特に補体活性との関連を中心として-

山形県立中央病院 心臓血管外科
東北大学 医学部胸部外科

長嶺 進 , 田林 晄一 , 羽根田 潔 , 毛利 平

(1992年12月14日受付)

I.内容要旨
成人の開心術症例20例を対象として体外循環中の補体の活性化とそれに伴う肺での白血球,顆粒球エラスターゼの変動を検討し,補体の活性化が術後の呼吸機能に及ぽす影響を検討した.
体外循環開始とともにC3aは3,130±1,770ng/ml (p<0.01), C4aは2,480±2,530ng/ml (p<0.05) まで上昇した.また体外循環中顆粒球数は右房より左房で有意に減少しており,(大動脈遮断直前:p<0.05, 遮断解除後: p<0.01), C3a, 顆粒球エラスターゼは大動脈遮断解除後で右房より左房で有意に高値であった (p<0.05).またC3aと顆粒球ニラスターゼにはr=0.782 (p<0.01) の正の相関関係が認められた.さらにC3aと術後の呼吸係数 (RI) 及び顆粒球エラスターゼとRIには有意な正の相関関係が認められた (それぞれr=0.624, r=0.735, p<0.01).
以上より,(1) 体外循環によりclassical及びalternative pathwayの両経路が活性化されるが,後者は大動脈遮断中にも自己肺でも活性化され,(2) 補体の活性化により肺での顆粒球の凝集がおこり,顆粒球エラスターゼが放出されると考えられ,体外循環に伴う肺障害の一因として補体の活性化とそれに伴う肺での顆粒球の凝集と顆粒球エラスターゼの放出が考えられた.

キーワード
体外循環, 肺障害, 補体, 白血球, 顆粒球ニラスターゼ


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