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日外会誌. 95(5): 317-325, 1994


原著

ポジトロン CT による食道癌局所糖代謝動態の解析
18F-fluorodeoxyglucose を用いた腫瘍 hexokinase 活性の評価と臨床診断への応用-

千葉大学 医学部第2外科(主任:磯野可一教授)

福長 徹 , 榎本 和夫 , 岡住 慎一 , 菊池 俊之 , 山本 宏 , 小出 義雄 , 磯野 可一

(1992年12月16日受付)

I.内容要旨
18F-fluorodeoxyglucose (FDG) を用いたPositron emission tomography (PET) により食道癌の局所糖代謝動態の評価を行い, PETの特性を生かした解析方法,予後不良因子としての評価および再発の質的診断法に関する有用性について検討した.腫瘍径3cm以上の食道癌11例にPET dynamic studyを施行した. Phelpsらのモデルを基にhexokinase活性を反映するk3値を算出する一方, FDG投与60分後の腫瘍一血漿の放射能濃度比であるCi/Cp値を計測した. k3, Ci/Cp共に切除標本より実測したhexokinase活性と有意に相関することにより,食道癌に対してはより簡便なCi/Cpが臨床的にすぐれた指標と考えられた. 42例の未治療の進行型食道癌に施行したstatic studyでは,癌部は全例FDGの高集積像として描出され,正常食道10例・食道良性腫瘍1例を含めた正診率はCi/Cp 2.0をcut off値とした時98.1% (52/53) であった.術後再発疑診例13例のうち,再発7例中6例でCi/Cpが2.0以上であったのに対し無再発6例では全例2.0以下であり,術後再発の質的診断に対するPETの有用性が示唆された.次に切除26例の臨床病理所見と,その内CI以上の根治度のえられた22例の予後を術前のCi/Cpと比較検討した.①年齢・占居部位・腫瘍長径・組織型・リンパ節転移や組織学的進行度とCi/Cpの間に相関はなかったが,組織学的壁深達度においてsm癌ではCi/Cpの低い例が多かった.② DNA ploidy patternはaneuploidy群のCi/Cpがdiploidy群に比して有意に高かった.③ Ci/Cpが術前に5.0以上を示した例に早期再発死亡例が多く, Ci/Cp 5.0以下の例に比し有意に予後不良であった. PETにより食道癌の腫瘍hexokinase活性が術前に評価でき, Ci/Cpは食道癌の予後を推測する一因子として臨床上有用と考えられた.

キーワード
ポジトロン CT (Positron emission tomography; PET), 18F-fluorodeoxyglucose (FDG), 食道癌, 癌の viability, 再発診断


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