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日外会誌. 95(4): 234-241, 1994


原著

十二指腸液胃内逆流による胃粘膜の組織学的変化,BrdU標識率,ならびにDNAメチル化に関する実験的研究

久留米大学 医学部第1外科教室(主任:掛川暉夫教授)

岩井 壽生

(1992年12月1日受付)

I.内容要旨
イヌ (n=20) を用いて十二指腸液胃内逆流モデルを作製し, 3カ月後, 6カ月後,および12カ月後に計20頭を屠殺し,それぞれの時期における胃粘膜の変化を,病理組織学的,に検討するとともに,胃粘膜細胞のBrdU標識率, DNAメチル化の程度についても検討を行った.
病理組織学的変化は,モデル作製後3カ月 (3M.モデル) ではびらんなどの表層性胃炎像のみであったが, 6カ月 (6M.モデル) では腺窩上皮の過形成性変化が,また12カ月 (12M.モデル) では粘膜の萎縮性変化が認められた. bromodeoxyuridine (BrdU)を用いた細胞動態の解析では, 6M.モデルは腺窩上皮の過形成性変化がみられた部位で対照群に比しlabeling index (L.I.) 値が有意に高く, 12M.モデルでも萎縮性変化がみられた部位でL.I.値が高かった.粘膜細胞のDNAメチル化は, 6M.および, 12M.モデルのL.I.値が高値の部位で高度に認められた.以上の実験結果から,持続的な十二指腸液の胃内逆流により生じる腺窩上皮の過形成や萎縮性変化と,増殖活性,およびDNAメチル化との間に密接な関連があり,発癌過程において十二指腸液が重要な役割を演じていることが示唆された.

キーワード
残胃癌, 十二指腸液胃内逆流, 細胞動態, BrdU, DNA メチル化

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