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日外会誌. 95(2): 94-101, 1994


原著

閉塞性黄疸時の膵ホルモン分泌ならびに代謝に関する実験的研究

信州大学 医学部第2外科学教室(主任:飯田太教授)

梶川 昌二

(1992年8月26日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時には,耐糖能異常を主とした膵内分泌異常が起こることが知られているが,その機序に関しては未解決の点も多い.その機序を明らかにする目的で雑種成犬を用い,以下の実験を行った.
黄疸群(J群)は総胆管を結紫し,対照群(C群)は単開腹のみを行い, 3週後に経静脈的糖負荷試験を行った.次に同様の方法で作製したJ群, C群を3週後に再開腹し,遊離膵を作製し, CCK-8刺激による灌流実験を行い,インスリン,グルカゴンを測定した.また,同様の方法で作製したJ群, C群を3週後に再開腹し,膵尾部を採取し, HE染色およびPAP法によりインスリン,グルカゴンを染色し,両群の膵ラ島を形態学的に比較した.経静脈的糖負荷試験では血糖値はJ群でC群に比し,高値を示し,インスリン値はJ群でC群に比し,低値を示した.遊離膵灌流実験では, CCK-8剌激によりインスリン値はJ群でC群に比し,有意に低値を示した.グルカゴン値はJ群でC群に比し高値を示したが有意差はなかった.形態学的検討では,両群に差を認めなかった.
閉塞性黄疸肝におけるインスリン,グルカゴン代謝を検討する目的で左肝管のみを結紫した選択的胆管閉塞を作製した. 3週後再開腹し,糖,アルギニン負荷後末梢血,門脈血,両側肝静脈血を同時に採取し, インスリン,グルカゴン値を測定した.肝静脈血インスリン値は胆管結紫側で,非結紫側に比し,有意に高値を示した.肝静脈血グルカゴン値は有意差を認めなかった.
以上の結果より,閉塞性黄疸時には膵ラ島のインスリン分泌能の低下と,肝におけるインスリン代謝の低下が認められるが,前者が後者を上回るために末梢血の低インスリン反応と,それに伴う高血糖が認められると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 膵内分泌機能, インスリン, グルカゴン, CCK-8


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