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日外会誌. 94(11): 1185-1193, 1993


原著

肝再発家兎 VX2胃癌モデルを用いた制癌剤 MMCの肝再発抑制効果の検討

1) 神戸大学 医学部第1外科
2) 神戸大学 医療技術短期大学部

多田 康之1) , 多淵 芳樹2) , 中村 毅1) , 斎藤 洋一1)

(1992年8月10日受付)

I.内容要旨
肝再発XV2胃癌モデルである家兎53羽を用いて,胃腫瘍(原発)巣切除前後における制癌剤mitomycin C (MMC) の投与量•投与時期および投与経路の相違による肝再発抑制効果を検討した.
対照群であるVX2癌移植14日後の原発巣切除時には肝転移は確認されなかったが,切除14 (移植28) 日後の剖検時には8羽中6羽 (75%) に多発性の肝再発が認められた.移植14日後の原発巣切除直後にMMCを0.5• 0.25mg/kg門脈および1.0mg/kg末梢投与14日後の家兎14羽には,肝再発巣は確認されず完全に再発は抑制されていた.しかし, MMC 0.125mg/kg門脈ならびに0.5mg/kg末梢投与14日後の家兎には,それぞれ5羽中4羽(80%)• 3羽(60%) に肝再発が認められた. MMC 0.125mg/kgの門脈投与家兎を術前MMC末梢投与群の対照として,移植14日後の原発巣切除当日1時間前と1および2日前にMMC 0.25mg/kgを全身投与し,さらに切除直後にMMC 0.125mg/kgを門脈投与した14日後の家兎には,それぞれ5羽中4羽 (80%)• 5羽中3羽 (60%)• 6羽中5羽 (83%) に肝再発が確認された.これらの術前末梢投与家兎の肝再発率および再発個数は対照群との間に差は認められなかったが,切除2日前のMMC投与家兎における肝再発個数は対照群より多い傾向が,切除1時間前投与家兎では少ない傾向がうかがわれた.
以上の成績は,原発巣切除後のMMC門脈投与による肝再発抑制効果は末梢投与の約1/4の薬剤量に相当し,末梢投与より肝再発抑制効果が高いことを示している.しかし,原発巣切除前の肝再発抑制を目的としたMMCの全身投与は付加効果もうかがわれるが逆効果の可能性もありえるので,慎重に実施する必要があると考えられる.

キーワード
XV2胃癌, 肝再発モデル, 再発予防, mitomycin C (MMC), 門脈投与


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