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日外会誌. 94(10): 1071-1077, 1993


原著

手術侵襲時における血中インターロイキン 6(IL6)値と急性相蛋白(APP)の変動
-慢性肝疾患合併例の肝切除術前後の変動を中心として-

大阪府立成人病センター 外科
*) 大阪大学 医学部産婦人科

桝谷 誠三 , 佐々木 洋 , 今岡 真義 , 大橋 一朗 , 石川 治 , 岩永 剛 , 山口 正明*)

(1992年6月1日受付)

I.内容要旨
マウスHybridoma MH60. BSF2の3H-thymidineの取り込みを利用したバイオアッセイ法により,手術侵襲前後,特に慢性肝疾患を合併した肝細胞癌の肝切除術前後における血中インターロイキン6(IL6)値および急性相蛋白(APP)の変動を検討した.
術後1日目の血中IL6値は250±88unit/mlであり,術前値の0.55±0.28unit/ml及び術後4日目(26±19unit/ml),7日目(1.5±0.90unit/ml)に比し有意に高値を示した.また術前のICG15分停滞率(ICG-R15) とr=0.56(p<0.01) と有意な相関を示した.
次に対象をA群:慢性肝疾患(肝硬変17例,慢性肝炎4例)合併肝切除群(21例:肝細胞癌),B群:慢性肝疾患非合併肝切除群(7例:転移性肝癌),C群:慢性肝疾患非合併非肝切除群7例:胃癌5例,膵癌2例)の3群に分類した. A,B,C各群の術前IL6値はそれぞれ0.73±0.44unit/ml,0.52±0.51unit/ml,0. 02±0.02unit/mlであり,術後1日目では,380±140unit/ml,100±62unit/ml,1.0±0.79unit/ml,術後4日目では38±32unit/ml,19±19unit/ml,0.01±0.01unit/ml,術後7日目では2.3±1.5unit/ml,0.59±0.59unit/ml,0.0±0.0unit/mlと各測定日においてA>B>C群の順に高値を示した.なお,A,C群問では術後1,4日目ではp<0.01,術後7日目ではp<0.05の有意差を認めた.
一方,肝切除症例(A+B群)での急性相蛋白 (C反応性蛋白,Fibrinogen,α1-antitrypsin) の変動をみると全て術後4日目にそのピークを示した.しかし,全測定期間を通じてA群の血中IL6値の方がB群に比し高値を示しているにもかかわらず急性相蛋白の血中濃度はむしろB群において高値であった.
以上より術後1日目の血中IL6値の上昇は術前の肝機能障害の有無,その中でもとくに術前ICG-R15と極めて深い関連を示すことが示唆された.また慢性肝疾患患者では術後IL6がより強く誘導されているにもかかわらず急性相蛋白の産生能が低いというimbalanceの存在することが示唆された.

キーワード
インターロイキン 6, 手術侵襲, 急性相蛋白, 肝切除術, 慢性肝疾患

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