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日外会誌. 94(9): 1033-1042, 1993


原著

Perfluorochemical 乳剤によるラット肝低温灌流保存における酸素化の効果
-トリパンブルー灌流核染色法による肝実質,非実質細胞障害の評価-

神戸大学 医学部第1外科

志岐 裕源 , 具 英成 , 黒田 嘉和 , 斎藤 洋一

(1992年6月10日受付)

I.内容要旨
酸素運搬体としてperfluoro-N-methyldecahydroisoquinoline(FMIQ)を用いたラット肝低温灌流保存を行い,肝実質細胞および非実質細胞に及ぼす酸素化の効果について検討した.UW液および20%FMIQを含む保存液(m-FMIQ)を酸素化の有無により4℃,0.2ml/g• liver tissue/minの流量で,12,18および24時間灌流した.ついでCaldwell-Kenkelらの方法に準じ200μMのトリパンブルーを含むKrebs-Henseleit bufferで灌流した後固定し門脈域および中心静脈域におけるトリパソブルー灌流核染色率を測定した.UW液の非酸素化灌流では12時間保存後門脈域および中心静脈域で,実質細胞は0.3±0.3%および0.2±0.2%,非実質細胞は5.8±2.1%および3.1±3.0%の核染色率であった.24時間保存後の実質細胞の核染色率は門脈域および中心静脈域で各々,1.2±0.6%および0.8±0.4%と明らかな増加を認めなかったのに対し,非実質細胞は各々,36.5±4.2%および7.8±6.4%となり門脈域においては時間とともに明らかな増加を認めた.UW液では酸素化灌流でも各保存時間で実質,非実質細胞の核染色率は両領域とも同様の値を示し,酸素化による違いは見られなかった.一方,m-FMIQ液の非酸素化灌流では24時間保存後の実質細胞の核染色率は門脈域および中心静脈域で各々,1.3±0.9%および0.4±0.3%,非実質細胞は門脈域で39.4±9.1%,中心静脈域で13.1±3.5%とUW液とほぼ同様の値を示した.m-FMIQ液の酸素化灌流では両領域とも非酸素化例に比べて実質細胞に差を認めなかったのに対し,非実質細胞の門脈域における核染色率は各保存時間とも明らかに低下した(p<0.01).とくに24時間保存後の門脈域の非実質細胞の核染色率は16.9±5.7%と非酸素化時に比べ明らかな低下を認めた(p<0.001).以上より,肝低温灌流保存における酸素供給は非実質細胞の障害を軽減し虚血,再灌流時の微小循環を改善させる可能性が示唆された.

キーワード
肝灌流冷保存, 肝非実質細胞障害, PFC 乳剤, トリパンブルー灌流核染色率

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