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日外会誌. 94(8): 863-868, 1993


原著

保存心筋におけるミトコンドリアのATP合成能に対する Na-L-Glutamate の効果

宮崎医科大学 第2外科
*) 宮崎医科大学 衛生学

桑原 正知 , 鬼塚 敏男 , 柴田 紘一郎 , 古賀 保範 , 濱田 稔*)

(1991年10月28日受付)

I.内容要旨
長時間保存後の心筋のATP合成能に対するNa-L-glutamate (Glu)の効果について,実験的検討を行った. 10週齢のwistar rat雄を用いて摘出心を4℃の, Gluを添加しないEuro-Collins(E-C)液と, Glu10mMを添加したE-C液に分けて24時間単純浸漬保存し,それぞれをB群, C群とした.保存後の左右両心室筋から調製したミトコンドリア (Mit) の酸化的リン酸化能を呼吸調節率 (RCI), P/0比 (P/0),状態3呼吸 (S3),状態4呼吸 (S4) にて測定し, ATP合成能 (OPR) を算出した.保存せずにMitを調製した対照群をA群として比較検討した.各群とも実験に供したラット数は6 (n=6) とした.結果は平均値でみるとB群ではRCIでA群の約53%, P/0で約45%にまで有意の低下を示したのに対し, C群ではRCIでA群の約76%, P10で約67%と有意に低下していたものの,それぞれB群と比較すると有意に高い値が得られた. S3はB,C群ともA群と比較して有意に低下したが, B, C群間では有意の差は認められなかった. S4はB群がA, C群に比して有意に高い値を示した.これらの変化に伴い,OPRはB, C群ともA群に比して,有意の低下を示したが, Gluを添加したC群は, B群に比して有意に高い値を保持した.以上の実験結果より,10mMのGluを保存液に添加することにより,保存後の心筋のMitにおけるATP合成能の低下が有意に抑制されることが示唆された.

キーワード
グルタミン酸, 保存心, ミトコンドリア, 酸化的リン酸化能, ATP 合成能


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