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日外会誌. 94(8): 824-831, 1993


原著

急性膵炎発症早期の循環動態の変動に関する臨床的研究

済生会神奈川県病院 外科(主任:高木 弘教授)

北野 光秀 , 吉井 宏 , 奥沢 星二郎 , 掛札 敏裕 , 長島 敦 , 茂木 正寿 , 山本 修三

(1992年4月20日受付)

I.内容要旨
急性膵炎発症早期の循環動態を経日的に測定し,重症度別の体・肺循環動態,心機能の変化,肺循環動態と呼吸不全との関係を明確にする目的で以下の検討を行った.当院外科に入院した発症24時間以内でかつ基礎疾患のない急性膵炎患者14例を対象とし,重症度判定基準に従い重症7例,中等症7例の2群に分けて, Swan-Ganzカテーテルを挿入し循環動態諸量を測定算出した.心係数CIと末梢血管抵抗SVRは観察期間中,それぞれ両群とも標準値に比べ高値および低値をとり,さらに重症群のCIは第4病日5.38±0.841/min/m2で,中等症群3.89±0.36に比較して高値をとり, SVRは889±234dyne•sec/m2と中等症1,435 ±188 に比較して低値をとった.肺動脈楔入圧PWP は重症群で, 2 病日以後高値をとったが,中等症群では変化はみられず,両群間で2, 5病日有意差が認められた.肺血管抵抗PVRは重症群で,標準値に比べ1, 3, 4病日低値をとったが,中等症群では変化せず, 4病日重症群と有意差を認めた. PWP-LVSWIから両群の心機能を比較すると,重症群の平均値はPWP11.9±8.4mmHg, LVSWI 59.8±17.8g•m/m2と,中等症 PWP 5.6±3.4mmHg, LV SWI 77.7±23.6g•m/m2 に比べて右下に位置した.肺毛細管圧Pmv<10.5mmHgの正常範囲で,RIは重症群1.55±1.00,中等症群0.45±0.68と重症群で有意に高値をとったが,Pmv>10.5mmHgでは,重症群2.22<3.01中等症群1.65±1.12と両群間に差はみられなかった.以上より急性膵炎では中等症,重症いずれも発症5日間持続するCIの増加, SVRの低下というhyperdynamic stateにあることが示唆された.また重症では中等症に比べ心機能の低下,肺毛細管傷害が明らかで,膵炎の重症化に伴う膵酵素の逸脱,血管作動性物質の関与が示唆された.

キーワード
急性膵炎, 循環動態, 呼吸不全


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