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日外会誌. 94(8): 796-800, 1993


原著

閉塞性黄疸肝虚血再灌流時における高エネルギー燐酸化合物及び組織血流量の変動に関する実験的研究
-間歇的反復虚血の影響について-

*) 岐阜大学 医学部第1外科学教室(主任:広瀕 一教授)
**) 海津郡医師会病院 

渡辺 敬*) , 林 勝知*) , 千賀 省始*) , 宮田  知幸*) , 飯田 辰美*) , 鬼束 惇義**) , 広瀬 一*)

(1992年3月23日受付)

I.内容要旨
近年,閉塞性黄疸症例に肝切除術を施行する機会が増加している.その際,肝は虚血に陥るが閉塞性黄疸肝に対する虚血の影響は未だ明らかではない.そこで,これまでに閉塞性黄疸肝における高エネルギー燐酸化合物及び組織血流量の変動に関し検討してきた.今回は閉塞性黄疸肝における反復虚血の影響について検討したので報告する.方法: Wistar系雄性ラットの総胆管を結紮切離し閉塞性黄疸モデルを作成した. 4週間経過したものをBDL-4W群とし,肝虚血実験を行い正常対照群と比較検討した.実験Aでは連続60分虚血後再瀧流を行った.実験Bでは虚血15分,解除時間10分の間歇的反復虚血にて合計虚血時間を60分にした.成績:実験Aでは, 1)肝組織ATPの虚血前値は, BDL-4W群において5.5±1.2μ mol/gdw, 対照群において9.4±0.8μ mol/gdwであり, BDL-4W群において対照群に比し有意(p<0.01)に低値であった.また再灌流後の回復率もBDL-4W群において対照群に比し有意(p<0.01)に低値であった. 2)組織血流量の回復率もBDL-4W群において対照群に比し有意(p<0.01)に低値であった. 3)xanthineはBDL-4W群において再泄流後有意(p<0.01)に高値を示した.実験Bでは, 4)ATPの回復率は両群間に有意差を認めなかった. 5)組織血流量の回復率も両群間に有意差を認めなかった. 6)再灌流後のxanthineの数値も両群間に有意差を認めなかった.考察:閉塞性黄疸肝を虚血にする場合, 60分間の連続虚血ではATPならびに組織血流量の回復は正常肝の虚血時に比して不良であった.しかしながら, 15分間4回の間歇的反復虚血では, ATPならびに組織血流量の回復は正常肝の虚血時と差はなかった. したがって反復再灌流という問題点はあるものの,閉塞性黄疸肝に対して合計1時間の肝虚血を必要とする場合には間歇的反復虚血は,有用であると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸肝, 高エネルギー燐酸化合物, 組織血流量, 間歇的反復虚血


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