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書誌情報]
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日外会誌. 94(7): 730-735, 1993
原著
膵癌に対するホルモン療法の試みと臨床応用の可能性
I.内容要旨1981年Greenwayらによって, ヒト膵癌に, Estrogen Receptorの存在することが報告され, 膵癌の増殖に性ホルモンの関与が示唆された.そこで我々は, 膵癌においても乳癌やスキルス胃癌と同様に, Tamoxifenによるホルモン療法の可能性に着目し, 膵癌切除例にTamoxifenを試用し, その有効性について検討したので報告する.
切除膵癌27例を対象として, Estrogen Receptorの存在を検索し, これらの内13例に術後の補助療法として, Tamoxifenを用いたホルモン療法を施行し, 生存率を検討した.また対照としてTamoxifenを用いなかった群をおき, 比較検討した.また膵癌切除例の我々の術後補助療法は基本的にはTegafulとPSKの連日投与で, これに加えるに, Tamoxifenを連日投与し, 追加的にMitomycinやアクラシノンさらにOK-432を使用した.Estrogen Receptorを同定する方法は, 膵癌のホルマリン固定組織切片を用いて免疫組織学的に検索した.すなわち, ER-D5モノクローナル抗体を用いたABC法で行った.
膵癌におけるEstrogen Receptorの陽性率は切除膵癌の27例中21例(77.8%)が陽性で高率であった.
そこで, まずホルモン療法非施行群のEstrogen Receptor陽性群(10例)と陰性群(4例)の切除膵癌の術後生存率を比較検討したところ, 6カ月(30.0%vs50.0%) と12カ月(10.0%vs 25. 0)において両群問に有為な差は認められなかった.しかしながら, ホルモン療法施行群(Tamoxifen投与群)のEstrogen Receptor陽性群(11例)では著明な術後生存率の向上をみ, 6カ月, 12カ月で85.7%となったが, 陰性群(2例)では全て5カ月以内に死亡した.また全膵癌のTamoxifen投与群(13例)と非投与群(14例)の術後生存率を比較検討したところ, Tamoxifen投与群は6カ月および12カ月の生存率は78.6%で, 非投与群の6カ月生存率は42.9%, 12カ月生存率は21.4%であり, 統計学的有意差(p<0.01) をもってTamoxifen投与群が良好であった.
以上の結果から, 膵癌にはかなりの頻度でEstrogen Receptorが存在し, ホルモン療法が生存率延長のうえで効果的であることが示唆され, 本稿で報告した.
キーワード
膵癌, ニストロゲンレセプター, ホルモン療法, タモキシフェン
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