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日外会誌. 94(7): 707-713, 1993


原著

“術後肝不全” に対する血漿交換療法の現況

滋賀医科大学 第1外科
*) 社会保険中央総合病院 

小玉 正智 , 谷 徹 , 井上 昇*)

(1992年2月8日受付)

I.内容要旨
いわゆる“術後肝不全”についての報告は多いが,疾患単位の定義も明確でなく,全国規模の調査やまとまった調査報告はない.今回日本プラスマフェレーシス治療研究会による1989年アンケートと“術後肝不全に対する血漿交換療法有効性調査班”による検討から術後肝不全の定義づけと現在の治療の状況につき調査検討した.
全国平均の術後肝不全に対する血漿交換療法の生存率は14%と著しく悪く,例数は劇症肝炎に次ぐ多さであった.今回の調査で年間の発生件数は600例以上と予測された.今回の調査班で術後肝不全の定義が検討され,その疾患としての暫定的な定義は「手術を契機として発生する総ビリルビン値5mg/dl以上かつ持続的上昇を呈し,ヘパプラスチンテスト40%以下, Coma grade I~ IIの病態をさす(閉塞性機序にのるものを除く)」と定められた.治療法として血漿交換以外には,アミノ酸療法,グルコース,インシュリン(G-I)療法,ステロイド療法が多くなされていた.対象となる症例の基礎疾患は調査班の症例によれば肝臓手術が多く,原因としては手術の他に大量出血および感染があげられた.また,多くの症例は術前から慢性肝炎や肝硬変といった重度の肝障害を伴っていた.血漿交換療法の持続期間は3週間以内の場合と50日~ 100日以内の2グループに分かれた.これら2グループの血漿交換の頻度は1.4~1.6日に1回とほぽ同ーであった.置換液としては,新鮮凍結血漿が大部分であった.治療目的は救命とするものは少なく,多くは病態の改善または維持であった.従って血漿交換治療の評価はビリルビンやComa grade, 凝固系因子のデータによるとする意見が多かった.今回の調査班の予後結果は,有効と認められる症例も多く,生存率は40%であった.

キーワード
術後肝不全, 血漿交換, 血液灌流, 肝硬変, MOF


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