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日外会誌. 94(7): 690-701, 1993


原著

ヌードマウスに移植したヒト大腸癌の細胞内 DNA および RNA 量についての研究

久留米大学 医学部第1外科学教室(指導:掛川暉夫教授)

林 譲司

(1992年3月13日受付)

I.内容要旨
6種類のヒト大腸癌の腫瘍株をヌードマウスに移植し,発生した腫瘍細胞の核酸量を測定し,核酸量が癌の増殖能の指標として有用か否かを検討した.すなわち,腫瘍内に存在する正常細胞(腫瘍内間質細胞)を内部標準とし,内部標準との相対比率により求められる腫瘍細胞のDNAおよびRNA量を測定し,腫瘍細胞の増殖能を解析した.
各腫瘍株をそれぞれ12~30匹のヌードマウスの左右の背部皮下に1個ずつ移植した.その後,経時的に生長する腫瘍を対象とし,各腫瘍株毎に生長曲線を作製し腫瘍の対数増殖期を確認した.さらに,腫瘍の対数増殖期におけるtumor doubling time (TD) を測定し,腫瘍細胞の増殖能の指標とした.また, ヌードマウスを対数増殖期の期間内で屠殺し,移植した腫瘍を摘出して検体とした.この検体を, Darzynkiewiczらの方法に準じ, Acridine Orange染色液を用い,細胞内DNAならびにRNAを染色し,フローサイトメトリーで解析した.細胞内のDNAおよびRNA量は,それぞれDNA index(DI)およびRNA index (RI)として求めた. DIは,腫瘍細胞のG0 G1期のDNAのpeak channel値(最高値)を内部標準のG0 G1期のDNAのpeak channel値で除した. RIは腫瘍細胞のG0 G1期のRNAのmean channel値(平均値)を内部標準G0 G1期のRNAのpeak channel値で除して算出した.
今回,測定可能であった6種類の腫瘍株の92検体でRIとTDを比較すると, RIとTDの間にr=-0.49 (p<0.001)と相関関係を認めた.また,各腫瘍株では,腫瘍株KLM3からの検体数27で相関係数r=-0.60 (p<0.001).また, KRK4からの検体数10で相関係数がr=-0.65 (p<0.05) となり,相関関係を認めた.一方, DIとTDとの間には相関関係は認めなかった.以上より, RIを測定することは固形癌の増殖能の指標として臨床応用が可能であると考えられた.

キーワード
フローサイトメトリー, ヌードマウス, tumor doubling time, DNA 量, RNA 量


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