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日外会誌. 94(6): 556-568, 1993


原著

敗血症性多臓器不全症例における組織酸素代謝と細胞障害の検討

千葉大学 医学部救急部 ・ 集中治療部
*) 千葉大学 医学部第2外科

織田 成人 , 平澤 博之 , 磯野 可一*)

(1992年1月29日受付)

I.内容要旨
目的:敗血症性多臓器不全(septic MOF)の病態をtissue hypoxiaの面より解明することを目的に術後septic MOF症例の組織酸素代謝と細胞障害について検討した.
対象:対象は消化器外科術後septic MOF症例17例(救命9例, 死亡8例)で, 経過順調な術後ICU入室患者14例を対照群とし同様の検討をおこなった.
方法:これらの症例において, Swan-Ganzカテーテルによる血行動態の測定と, 酸素代謝の指標として酸素供給能係数(DO2I), 酸素消費量係数(VO2I)をFickの方法により測定した.また同時に細胞内代謝の指標として動脈血中ケトン体比 (AKBR), osmolality gap (OG), 血中lactateを測定し, これら3つの指標より細胞障害度を表すcellular injury score (CIS)を算出し, 酸素代謝の指標と比較検討した.
結果及び考察: Septic MOF症例の血行動態は早期にはhyperdynamic stateを示し, VO2Iは対照群に比し有意に高く, 組織酸素代謝の亢進が認められた.しかし, それにもかかわらずCISは対照群に比し有意に高く細胞障害の発症が認められた.また早期にはCISはVO2Iと正の相関を示した.したがってseptic MOF早期には酸素代謝の亢進にもかかわらず組織ではなお相対的なtissue hypoxiaが存在し, これが細胞障害発症の一因となっていることが示唆された.また経時的推移をみると, 救命例においてはDO2I依存性のVO2Iの増加とCISの低下が認められた.一方, 高度細胞障害を示した死亡例においては治療によるDO2Iの増加にもかかわらずVO2Iは低下し, CISはさらに上昇した.以上よりseptic MOFにおける組織酸素代謝の異常はMOFの本態である細胞障害発症・増悪と密接な関連があり, septic MOFの治療さらには予防においては組織酸素代謝を改善させる治療法の確立が重要であると考えられた.

キーワード
tissue hypoxia, 酸素供給能係数, 酸素消費量係数, cellular injury score (CIS)


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